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今までの心音の音響分析の結果から、DSSF3による心音の分析法を総括してみます。
計算条件は以下の通りです。
測定区間は、心音測定6で行った測定開始後4.2秒を1拍目とします。
次の心拍(2拍目、測定開始後5.05秒)は X軸をスクロールして、Ⅰ音、Ⅱ音共に表示されるように調整しました。
3拍目(測定開始後5.95秒)
4拍目(測定開始後6.83秒)
Ⅰ音、Ⅱ音の振幅最大の測定開始後経過時間(例えば1拍目の場合、Ⅰ音、Ⅱ音それぞれ、4.26sec、4.55secからの10msecが振幅最大となる)を使用して分析できるのは、心拍の時間間隔と、その逆数に60を掛けて求められる一分間の心拍数です。結果は以下のようにまとめられます。
Ⅰ音の心拍数と、Ⅰ音の時間間隔
1拍目 から 2拍目 | (4.26sec から 5.13sec まで) | 0.87sec | 69 拍/分 |
2拍目 から 3拍目 | (5.13sec から 6.01sec まで) | 0.88sec | 68 拍/分 |
3拍目 から 4拍目 | (6.01sec から 6.89sec まで) | 0.88sec | 68 拍/分 |
Ⅱ音の心拍数と、拍数ごとの時間間隔
1拍目 から 2拍目 | (4.55sec から 5.41sec まで) | 0.86sec | 70 拍/分 |
2拍目 から 3拍目 | (5.41sec から 6.29sec まで) | 0.88sec | 68 拍/分 |
3拍目 から 4拍目 | (6.29sec から 7.17sec まで) | 0.88sec | 68 拍/分 |
また、Ⅰ音とⅡ音の間隔は次のようになりました。
1拍目 Ⅰ音からⅡ音 | (4.26sec から 4.55sec まで) | 0.29sec |
2拍目 Ⅰ音からⅡ音 | (5.13sec から 5.41sec まで) | 0.28sec |
3拍目 Ⅰ音からⅡ音 | (6.01sec から 6.29sec まで) | 0.28sec |
4拍目 Ⅰ音からⅡ音 | (6.89sec から 7.17sec まで) | 0.28sec |
心拍に異常が感じられるときは、心音の音響分析が必要です。具体的には、異常が計測上の問題なのか?不整脈なのか?その程度は?などが問題となります。
そのためにはランニングACF分析を行います。この場合は代表周波数などを含む耳による実際の聴診による音響的特徴に近い音響分析です。目的は、感覚のみに頼るのではなく、測定値を使用することです。そうすることによって、正確で安全な診断を行うことができます。
この分析では、多次元的な音響特徴を求めることができます。それによって、ひとつのある時点の音響信号を、従来の周波数や、音圧レベルといったものだけではなく、音響分析に有効なパラメーターを使用して、より確実な分析を行うことができます。
有効なパラメーターとしては次の4つが挙げられます。Φ(0)は、音圧レベル。Ⅰ音の前半の平均レベルを求めます。その時点における、τ1は代表周波数。音の高さ(ピッチ)です。φ1はそのピッチの強さを最大を1として表した値です。τeはACFの有効継続時間で、10パーセントまで減衰する時間です。
Ⅰ音、Ⅱ音の音響分析として、積分時間100msec、ランニングステップ5msecでのACF分析を行い、Φ(0):音圧レベル、τ1:代表周波数、Φ1:ピッチの強さ、τe:を求めます。
1 拍目は心音測定6を参照してください。
2拍目は以下の表示部分です。左下のデータテーブルを読み取ると、経過時間5.06秒、Φ(0) -35.19dBA、 τe 14.29msec、τ1 0.68msec、φ1 0.48 となっています。
計算結果は以下のようにまとめられます。
Ⅰ音 前半 | Φ(0) | τ1 | φ1 | τe |
1 拍目 4.2sec | -34.5dBA | 0.68ms | 0.50 | 10.6ms |
2 拍目 5.06sec | -35.2dBA | 0.68ms | 0.48 | 14.29ms |
Ⅰ音後半、Ⅱ音についても同様に分析を行います。
3 拍目、4 拍目も同様に行います。
以上の分析により、異常がはっきりした段階で、音響分析による心弁の動作タイミングの測定を行い、診断のためのデータを出力します。
そのため心弁の動作分析として心音測定7 と同様な分析を行います。
積分時間 2msec ランニングステップ 1msecの分析を行い、τ1の値から、代表周波数成分の高い3ポイントを見つけ、そのポイントのΦ(0)τ1、φ1、τeと、それぞれの測定開始後の経過時間を求めます。
この場合、それぞれの心弁の動作タイミングが重要です、音質的な分析は、心弁の動作によるものとあくまで確認を行うためです。もともと継続時間が短く、計測値そのものは測定タイミングによるからです。それに較べて、動作タイミングや、動作スピードは非常に重要です。
以上で分析を終了します。
まとめとして、生体音響の多次元リアルタイム分析システムとしては以上の分析を行います。ただ現状では、この心音測定9のように、労力がかかるので、専用のアナライザーの開発が、求められます。
また生体音響のリアルタイム分析システムとしては、生体のパルス信号に対応した、汎用のパルスアナライザーによる、リアルタイム監視を開発目標としています。これは、解りやすくいえばこの一連の分析を、マルチでリアルタイムに行うことを目標としています。
機能:心音の分析については、リアルタイム測定の記録から、分析必要な箇所があれば、その部分の分析を行う。
心拍の間隔、振幅等が異常なとき、異常な心拍について、Ⅰ音、Ⅱ音どちらも積分時間10msec、ランニングステップ5msecでのACF分析を行い、Φ(0)、τ1代表周波数、Φピッチの強さ、τeを求めます。
また、積分時間 2msec ランニングステップ 1msecの分析を行い、τ1の値から、代表周波数成分の高い3ポイントを見つけ、そのポイントのΦ(0)τ1、φ1、τeと、それぞれの測定開始後の経過時間を求めます。
効果:以上の分析により、心音からの心臓の動きの状態の監視や、異常の検出、原因解明のための心弁の動作分析が可能と考えられます。
July 2004 by Masatsugu Sakurai