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心尖部のI音とII音(正常)、心基部のI音とII音(正常)、亢進したI音(異常)、I音の減弱(異常)
(心音測定8)

  • I音……発生機序は、房室弁閉鎖(心室収縮期の開始)である。持続時間が長く鈍い音であり、最高聴取部位は心尖部である。
  • II音……発生機序は、半月弁閉鎖(心室拡張期の開始)である。持続時間が短く高調な音であり、最高聴取部位は心基部である。

    心音の、聴診主要部位として、大動脈弁領域(第2肋間胸骨右縁)、肺動脈弁領域(第2肋間胸骨左縁)、三尖弁領域(第4肋間胸骨左縁)、僧帽弁領域(心尖部)がある。又、大動脈弁領域と肺動脈弁領域をあわせて心基部という。

    実際の心音 (http://www.medic.mie-u.ac.jp/student/sinnonn00.html)

    音声(心尖部のI音とII音) 心尖部はI音の最良聴診部位である。
    音声(心基部のI音とII音) 心基部ではII音が聴取しやすい。
    音声(亢進したI音) これは、僧帽弁狭窄症の例である。
    音声(I音の減弱) これは、僧帽弁閉鎖不全症の例である。
    音声(I音の分裂) 生理的なI音の分裂の例である。
    音声(正常呼吸性分裂) 呼気時には、IIAとIIPとが重なってタンと一つの音になり、吸気時には吸気時には狭い間隔でタラッと分裂して聞こえる。

  • I音、II音はラブ-タップと聞こえる。I~II音間隔は収縮期、II~I音間隔は拡張期である。I~II音間隔は、II~I音間隔より短い。
  • I音は心尖部で、II音は心基部で最もよく聴こえる。
  • II音は半月弁の閉鎖により生じ、大動脈弁成分(IIA)と肺動脈弁成分(IIP)の2成分よりなっている。
  • 正常では、IIAがIIPよりやや先行する。IIA・IIPの分裂は吸気時の終わりに明瞭となる(正常吸気性分裂)。これは、吸気時に静脈還流が増加し、右室の一回拍出量が増すことで、IIPが遅れ、左室駆出時間は反対にやや短縮してIIAが前進するためである。
  • (2004年7月26日 修正開始)

    去年の分析は一部最新のDSSF3の分析に置き換えます。この分析は、聴診の教育用CDの音の分析です。

    上記の医学的表現やWAVEファイルは「オンライン臨床実習」のものを使用させていただきました。

    「実際の心音」のリンク部分をマウスの右ボタンでクリックして「対象をファイルに保存」すれば、心音のWAVEファイルをハードディスクにダウンロードすることができます。そのWAVE音源(心尖部のI音とII音、心基部のI音とII音(正常)、亢進したI音(異常)、I音の減弱(異常))を「DSSF3 バージョン5.0.5.6」で再分析しました。

    ランニングACFのLOADでWAVEファイルを指定して読み込みます。


    (1)正常な心臓の音声(心尖部のI音とII音)

    正常な心臓の音声(心尖部のI音とII音)をランニングACFの測定画面に読み込みました。

    shion13 という名前でデータを保存しました。

    SAで読み込みます。

    心音の測定5と同じ計算条件である積分時間10msecで、測定時間は5msec間隔で分析を行います。

    計算終了後、SAで表示しました。 WAVEの振幅表示です。X軸は測定開始後の時間を表示しています。測定時間は9.02秒です。もとのWAVEファイルは右のデータ部分の表示で、サンプリングレートは22K モノラルで、測定時間は9.02秒でした。振幅時間で、分析してみると間違いで録音レベルが高すぎるか、それとも、特徴を聞かせるために、人為的かのどちらかです。

    X軸を8倍にズームしてみました。Ⅰ音の継続時間がⅡ音より長い点がわかります。

     ACF分析です。これはΦ(0) 積分時間10msecの音圧レベルの時間変化です。


    I 音、II 音をX軸の時間軸方向 16倍ズームしました。心尖部はⅠ音が最もよく聞こえる場所だそうです。



    (2) 正常な心臓の音声 (心基部のI音とII音)

    省略します。よろしければ、(Ⅰ)のように分析して下さい。以降、WAVEや、スペクトラム分析は使用できいので、最新のDSSF3も、2003年の分析も同じです。この場合はACF分析での音圧レベルの時間的変化の分析で充分です。以降は2003年のままそのままにします。

    2004年7月26日修正終了。


    (3) 異常のある心臓の音声 (亢進したI音)

    亢進したI音は僧帽弁狭窄症の例です。WAVEファイルをRAのランニングACFに読み込みました。

    これもSAで分析しました。Φ(0) 音圧レベルの時間変化のグラフです。これも音声データはサンプリングレート22K モノラルで、測定時間9.31秒のデータでした。

    X軸の時間軸方向 4倍ズームしました。

    僧坊弁狭窄の心音の例 心音の解釈
    OSは弁開放音で拡張早期にあり、それ以降心雑音が続くとあります。

    僧坊弁狭窄の典型的な二つの雑音の特徴を図示していきます。

    最初の音は、低調な拡張中期雑音です。

    2番目の音は、やや高調な雑音で、拡張末期に認められ前収縮期雑音と呼ばれています。これは収縮期雑音のように聞こえることもありますが、ちういさくなっていきます。そしてS1の前で終わっています。

    これら2つの雑音を混ぜると

    僧帽弁狭窄と、僧帽弁閉鎖不全が合併したときには、前収縮期雑音は収縮期雑音と混ざったように聞こえます。(これは参考です)

    X軸時間方向に8倍ズームした1拍目の心雑音です。

    2拍目の心雑音です。

    3拍目の心雑音です。よい録音データがあれば、僧帽弁狭窄についても「心音の測定7」のように、弁の動作タイミングやその音響特性が分析できれば、この特徴的心雑音も高時間分解能な分析を行うことで、さらに明確に深く解明できると考えられます。


    (4) 異常のある心臓の音声 (I 音の減弱)

    ランニングACFの測定画面に読み込みました。I 音の減弱は僧帽弁閉鎖不全症の例だそうです。音響的な測定を行ってみます。

    SAで読み込みます。

    計算終了後、SAで表示しました。先頭はΦ(0) 音圧レベルの時間変化です。X軸は測定開始後の時間を表示しています。測定時間は9.02秒です。もとのWAVEファイルは右のデータ部分の表示で、サンプリングレートは22K モノラルで、測定時間は8.01秒でした。

    X軸の時間軸方向 2倍ズームしました。

    I 音、II 音をX軸の時間軸方向 4倍ズームしました。

    I 音、II 音をX軸の時間軸方向 8倍ズームしました。

    高調で吹くような全収縮期雑音です。軽度の僧帽弁閉鎖不全ではこの雑音しか聞こえません。

    典型的な僧帽弁閉鎖不全の心音です。S3は過剰心音、心音 III です。

     
    参考資料
    「心臓の聴診:基礎と臨床」
    THE GUIDE to HEART SOUNDS: Normal and Abnormal
    Donald W.Novey,M.D.
    Marcia Pencak, R.N.,M.S.
    John, M.Stang, M.D.
    (ヘスコインターナショナル刊)
     

    April 2003 by Masatsugu Sakurai