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諸君がYOSHIMASAの未来を創る

高性能には相応のオペレーションが必要である。そうでないと、それが得られないというのもまた格別である。
《スレッショールド4000》は200w×2の純A級メインアンプである。電気ストーブのような発熱と40kg以上の重さ。真空管プリアンプ《カウンターポイントSA5》は電源部がセパレートになっている。ハイ・パワー・アンプを試して見たくて手に入れた。音質は素晴らしいが、操作が難しい。下手をすると壊れるというのには驚いたが、この手の超マニア向け製品では当たり前のように説明書に書いてあった。メインアンプをON。大きなスイッチから火花が飛ぶ。次にプリアンプ。ボリュームを絞り、ミュートして、電源部のスイッチを入れる。発光ダイオードが赤から緑に変わる。それに30秒ぐらいかかる。インプットセレクターをセットし、ミュートスイッチをオペレート側にした後、ボリュームを調節する。
「なるほど」という気になってきた。はじめは面倒だと思ったものが気にならなくなり、ついには「こうでなくては」と人を納得させる性能を持っていた。切り方も、いきなりメインアンプをオフにしても、音はしばらく聞こえている。
アンプの中の電解コンデンサーの放電が終るとボリュームを絞り、ミュートにして、プリアンプの電源オフ…終了。コンピュータは現在、同一軸上の全く違う方向に向かって発展している。ひとつは人工知能を目指す第5世代コンピュータであり、もうひとつは最も非人間的な方向のスーパーコンピュータである。それが従来の物理実験具と違う点は、扱う量がアナログではなくデジタルだということである。自然は複雑であるから限られた実験で現象を捉えるためには高速処理が要求される。超高速、大容量のスーパーコンピュータが計算物理学者によって切望されて来たのはそのためである。
現代のスーパーコンピュータはふたつの速さをもっている。ひとつは汎用機と同等であり、もうひとつはスーパー速度である。それはちょうど自転車とジェット機がひとつのコンピュータの中に同居しているようなものである。MFLOPS(メガフロップス、1秒間に106回の浮動小数点演算を行う速さを1とする)の単位としてふたつの速さを述べるならば、一方が5 MFLOPS程度であり、もう一方が500 MFLOPSである。
ふたつの異なる速さをいかにうまく操るか。それがスーパーコンピュータの操作技術であり、ソフトウェアエンジニアの技なのだ。それは、パイプライン方式のアレイプロセッサであり、ベクトル計算機である。内部のスカラー演算部は自転車であり、ベクトル演算部がジェット機にあたる。ジェット速度で突っ走るためには、プログラムをDOループの塊で書くべきであり、この違いが速度で10倍、100倍の差を生む。当然、そのオペレーションは簡単ではない。
企業が複雑で高度な動きをするためには、企業理念と経営方針が全員の中に徹底していなければならない。多くのビジネスマンはその組織と同じ価値観を持っているのかどうかわからないが、高度な組織を作るためには、それをはっきりさせる必要がある。
組織戦はチーム戦であり、これができないと高性能な会社のオペレーションはできない。そのために、我々はまだ社員が7名だった頃から、ふたつの企業理念を持っていた。ひとつはソフトウェア技術者の社会的地位の向上であり、そのために妥協のない闘いをすること、第2に真のソフトウェア会社を目指すことである。
他のどこよりもその説明が必要なのは、この広報にしろ、研修にしろ、これに共感する人に来てもらいたいからであり、その人にはいつも吉正をわかってもらえると信じているからである。

代表取締役社長 櫻井正次

(87年9月号より)


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