諸君がYOSHIMASAの未来を創る |
日本はいい国である。しかし、その経済環境は物価、土地、税金、福利厚生の点で、個人、会社にとって必ずしも良いとは思えない。
それを考えたとき、USAが視野に入ってきた。
日本に税金は高いと思う。日本の、というと世界を見ているようだが、それほどは知らない。ただ、USAに行ってみて感じたのは、日本は物価も高いことだ。信じられないほど高い。これは円とドルのレート、税金の問題が大きい。政府に文句を言っているのではない。日本はいい国である。しかし、その経済環境は物価、土地、税金、福利厚生の点で、個人、会社にとって必ずしも良いとは思えない。
貿易経済の収支が良い割には国民生活は楽ではないし、いくら懸命に働いても税金で取られてしまう。所得税、法人税が重いと、既に財産を持っている者は働く意欲を失う。失敗を恐れる。無いものは無い。これでは社会は良くならない。大企業があまり税金を納めておらず、利益は税金に取られることから銀座等の接待、交際費天国が存在するのも日本ならではである。随分迷惑しているのだが、なかなか良くはならないだろう。
組織の資産保有をUSAに移していき、利益はTAX
FREE税制国の活用が必要なのだ。長期的に使用する固定資産や動産、パテントを所有する会社の所在地としては経済的安定以上に政治的安定や自由主義経済が重要なポイントとなる。日本は過度のインフレ、保守的な公官庁、貿易障害など諸外国と比較しても自由経済とは言い難い。USAを考えるのは資本主義経済が安定していること、多国籍企業の国であることからである。日本に住んではいるが、人であることに国境はない。創り上げる組織が日本政府のもとにある必然性もない。自由な環境を求める動きは過去の例からも明らかだし、これからも変わらない。世界的視野に立てば組織の国際化が日本のためでもあるように思う。
なすべきことは多く、一層の努力が要求される。しかし、比例して借金が増え、それも困難な融資環境の中でジレンマを感じていた。自由な環境への進出という手段には魅力があり、それしかないかもしれない。「失敗するくらいなら何もやらない方がいい」という風潮の中で「それなら自分でやるか」となるが、先立つものと充分なストックが必要だからその必然性があるのである。各国の分化・民族性のちがい、言語・法律の問題などがあるから容易ではないが、やらねばならない。
吉正グループのマネージメントは年々複雑で難しいものになってきているが、今後進む企業の多国籍化はそれに拍車をかけるだろう。その結果、ソフトウェア会社としてインターナショナルなものができるかも知れないし、テクノロジーやファンダメンタルに著しい効果があるだろう。としても、大企業ならどこでもやっていることに参入できるだけかもしれない。しかし、力がついたならそれを社会に向け、全員で力を合わせて日本と社会をより良くする原動力となりたい。
ソフトウェア・エンジニアリングの社会的地位の向上と、妥協のない闘いによる絶対的な力を背景に真のソフトウェアハウスを目指すことは吉正の経営理念であり、創立以来の目標であった。以来、少数ではあるが理解と信頼を基盤に精一杯の発展をしてきた。しかしなし得たのだろうか。無気力とエゴイズムの中で大切なものを守ってきたのだが、技術と技術者の理想は実現できたのだろうか。
開発型・創造型ソフトウェアハウスへの移行にはデベロップ・マシーンと多額の資本が必要であり、そういったものに対するニーズやリスクがその体質変革の障害となり、ソフトウェアハウスを旧態依然としたものにしてきたのである。これは単に一業種の問題に留まらず、社会全体の問題なのである。ソフトウェアハウスのみならず、開発型・創造型企業のほとんどない国で、そこに至るにはかなり高度な方向へ進まざるを得ないのである。
代表取締役 櫻井正次
(86年12月号より)