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エキゾーストノートから方向情報を分析
(自動車騒音分析テスト7)

自動車騒音分析テスト5」で積分時間を0.2秒に短くすることにより、左右のマフラーの音と中央のエンジンの音の飛来方向が分析できました。方向情報を加味した分析に進むため、さらに積分時間を0.01秒に短縮して分析を行ないます。

ferrari5.wav (44.1kHz / Stereo / 6.1sec / 526KB)

方向情報τIACCは2CHの相互相関関数から得られるパラメーターにより分析します。それらのパラメーターの定義は、以下の図で定義されています。

相互相関のパラメータの意味です。τIACCはXj軸上の遅れ時間msecで表わします。相互相関度のピークがX軸のゼロの場所であれば、音源はマイクの正面にあります。少し右に音源が寄っていれば、右のマイクに音が早く届きますから、左のマイクの遅い分だけ右を遅らせてやります。この場合はτIACCがプラスの値です。

X軸の右側(正の符号)は右チャンネルの遅れ時間です。左側(負の符号)は左チャンネルの音響信号の遅れ時間です.Y軸の値は右チャンネルと、左チャンネルの音響信号の相互相関度を表しています。その意味は1はまったく同じものです、-1がその反対、ゼロは相関度ゼロです。1と0の間の数字はその間の相関度を表しています.

左右のマイク間隔2.5cmとして、残りの辺が2cm、1.5cmの直角三角形を使用した「ピタゴラスの定理」によって 1sec:340m/sec=0.044m/sec:1.5cm、1.5cm遠くなると、遅れ時間約0.044msecに相当します。

図1(Figure1)は遅れ時間0の場合で、正面に音源があります。

図2(Figure2)で、マイク間隔2.5cmで左CHの遅れ時間が0.044msecの場合は右30度の方向です。

図3(Figure3)で、マイク間隔2.5cmで左CHの遅れ時間が0.058msecの場合は右60度の方向です。

ちなみに左CHの遅れ時間が0.073msecの場合は右90度の方向です。

マイク間隔が狭いステレオ一体型マイクでも、このτIACCの遅れ時間で、音の飛来方向が求められるというのが理論です。マイク間隔が25cmでも同様に計算できます。つまり、左CHの遅れ時間が0.44mscの場合は音源は右30度の方向になります。

建築音響では左右の耳の間隔(30cm以下)から1msec以内で定義されていました。その遅れ時間最大 1msec、同一な音が回り込む時間を除外したわけです。データは今までの Ferrari Mondial tのアイドリングのデータを使用します。

これまでの分析の時間窓2秒は具体的には44.1KHzのサンプリング、つまり1秒間に44000データ得られるデータを2秒ずつの88000のデータで、分析を行うことでした。さらに0.1秒のランニングステップ単位にはそれを行えば、ランニングステップ0.1秒刻みの2秒平均ずつの測定データが得られます。したがって分析結果は2秒も平均していたたため方向データが失われてしまったのです

RAで分析テスト4のデータの最初の部分2秒を残して後をカットし再登録しました。積分時間0.01秒、ランニングステップ0.005秒で表示しています.

SAで呼び出します。

計算条件設定画面です。

分析結果 全図

IACFの図を分析した結果、以下の4つの方向情報が確認できました。

τIACC -0.07のIACFのグラフ

τIACC -0.05のIACFのグラフ

τIACC -0.02のIACFのグラフ

τIACC 0のIACFのグラフ

飛来方向が違えば、違う方向からきた音ですから、すくなくとも発生位置が違う音といえますが、逆はそうともいえません。同じ方向から来たからといって必ずしも同じ音源とは限りません。

人間は雑踏の中でも、特定のちいさな声を聞き分けることができます。それをカクテルパーテイー効果といいます。人間の脳は、両耳で、聞き分ける音の違いから音の飛来方向を聞き分けてそれを実現しています。

人間の脳をシミュレーションするうえで、大脳聴覚理論では方向情報の分析を音響解析に取り入れる重要性に着目してきました。本来の目的は、目的の音を周囲の雑音から分離したり、また複数の話者の音声を分離できます。これらは正確な分析のために不可欠な技術なのです。

 

September 2002 by Masatsugu Sakurai