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フェラーリV8エンジンの排気音とエンジン音
(自動車騒音分析テスト5)

自動車騒音分析テスト」の計算条件を変更して(積分時間つまり平均時間を0.2秒、1/10に短くして、Ferrari Mondial t のアイドリング時の排気音およびエンジン音の1段階精密なランニングACF分析を行いました。

ferrari51.wav (44.1kHz / Stereo / 15sec / 2,585KB)

人間の脳は、楽器や音楽を2~3秒の時間窓で聴き取っているようです。それが今まで積分時間2秒で行ってきた理由です。積分時間を0.2秒にすれば、2本の排気管がある場合、排気音の飛来方向を時間ごとに分析することが可能です。

前回分析したフェラーリV8のデータを使用します。

 

φ0:音量の図ですが、2秒にくらべて0.2秒だと非常に細かな音圧レベルの変化を測定できます。

計測後1秒で音量が低下したところがあります。実際は1 - 2dBAといった無視できる量ですが、これは計測開始0.9秒後、Φ(0)は -4.14dBAで、この計測時間の中では最小音量です。

 

τIACC:時間ごとの変化をみると、積分区間0.2秒の分析の場合は積分時間が2秒のときとまったく違います。主なノイズはエンジンノイズと左右のマフラーですから、どの音がそのとき一番大きいかの音の飛来方向を計測しています。前の図の音量最低の計測後0.9秒のタイミングとしてはこの図でも音源の切り替わりのポイントでした。τIACCが正の値のときは、マイクより右方向に音源があります。その値が大きいほど右にずれます。τIACCが負の値の時は、音源が反対の左方向にあります。全く正対すれば、ゼロですが。その様にマイクを正確にセットできていなかったとしても測定時には複数音源の相対的な位置関係を正確に示すことができます。

τ1:ピッチ

 

マイクは左のサイレンサーの近くに置かれています。また少し右に向けておいてあるため、ミッドシップに積んでいるエンジンがマイクの左側に寄っています。エンジン音はτ1が短い1msec近辺の場合1KHzの代表周波数成分です。第2周波数に2KHzがあります。排気音が大きければ、代表周波数は357Hzです。わずかに300Hzのときがあります。エンジン音の代表周波数1kHz、まれに2kHzが出ます。積分時間が2秒のときは、すべて357Hzの代表周波数でしたが、積分時間が0.2秒に短くなったことにより、それによって第2周波数であった 300Hzや、エンジン音の代表周波数 1kHzが出てきました。

φ1:ピッチの強さ

ACF:0.9秒後の自己相関関数です。

エンジンのノイズのデータ(2000年2月21日)がありましたので、ランニングACF測定して、音源をつけておきます。

ferrari5.wav (44.1kHz / Stereo / 6.1sec / 526KB)

エンジンフードを開け、エンジンの真上で測定したものです。もともと30秒ありましたが6.1秒に短縮してあります。

WAVEファイルに出力しました。

SAに読み込んでみます。

積分時間2秒の分析条件です。

Φ(0) 音圧レベルの時間変換のグラフです。すこし波打っています。

SAの一括グラフ作成機能で作成しました。

τ1のグラフです。

エンジン音の音の高さとしては

積分時間0.2秒の分析条件です。

SAの一括グラフ作成機能で作成しました。

τ1のグラフです。

積分時間を短くすると、精密になります。ただ大きくみると、グラフのように、0.8から0.9の部分と、1.2くらいの部分の2つになります。積分時間を短くしていくことにより、第2代表周波数が、ピッチとして出てくる場合がおこりました。積分時間を短くしても、周波数成分は変わらないようです。

ただ、エンジンフードを開けて、上で聞く音と、エンジンフードを閉めて、車の後ろで聞くエンジン音は、音の高さが変化して聞えるかも知れません。エンジン調整で少しずつ変化しているかも知れませんが、測定データは多くの情報を伝えてくれます。

このシステムは音源の位置情報の変化が合わせて分析できる多次元な音響分析システムです。音圧レベルの変化、エンジンの爆発回数を表す基本周波数から、アイドリング状態かどうか、回転数や排気系、エンジン音の音の高さを知ることができます。ピッチやピッチの強さ、響き具合もACF分析から得られます。それを活用すればエンジンの調整や故障診断も可能であると考えます。

April 2003 by Masatsugu Sakurai