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ジェット旅客機着陸騒音測定
(航空機騒音分析テスト3)

2004年8月8日加筆

今回も、前回に引き続き、再分析を行います。最後に加筆します。

(オリジナル)

夜の空港の着陸騒音測定、および着陸点の住宅地上空での計測

 
測定日時: 2002/01/28 20:30
天 候: みぞれ
気 温: 6℃
湿 度: 60 %
測定場所: 小牧空港南東 レストラン モアの前(下の地図の3の位置)
WAVEファイル: air3.wav (44.1kHz / Stereo / 20sec / 3.36MB)

 

名古屋(小牧)空港

旅客機がすぐ目前を左から右斜め後ろに通過していきます。

名古屋空港の滑走路の南東の端から少し離れています。滑走路の間近と比べると、高速で通過するため騒音時間が短いです。騒音計が95dBAを指しているときのの1/3オクターブ分析。

▼ 音量のピーク付近のTEF 3次元表示

▼ 音量のピーク付近のリアルタイムACF表示

▼ ランニングACF

測定開始後9秒から14秒の5秒間に音量の変化が大きい。騒音計による測定では78dBから93dBの差15dB。
SAで、分析します。

ランニングACFは2秒で再計算させます。

▼ Φ(0)

計測された音圧レベルは測定11秒後にピークを計測しています。この場所では2秒間に15dBの音量差があり、一気に増えて減る感じです。

最初の計測の着陸地点での計測では最初5秒間で音圧レベルは緩やかに上がってきて、3秒で下がっていきました。落差は同じ15dBです。音量的には全体的に5dB~10dBAは着陸点の方が大きいです。(100~105dB) これは機体との距離の問題です。タイミングは積分時間2秒なので、あまり正確ではありません。

▼ τe

前半のτeは5msecですが、音量が増えはじめる計測後8秒で急に増加をはじめます。音圧レベル最大の観測ポイントに一番近い点でτeが3.76(最小)になり、音が減少し終わった14秒のところで最大30msecになり、そこから遠ざかるにつれて5msecに落ち着いていきます。この値の変化は今までの計測例と同じです。

▼ τ1

このτ1の時間推移のグラフは、ジェット機騒音の場合は代表周波数の時間推移をあらわしています。ここでは0.7msecつまり1.5KHzから1msec、1kHzを経て、1.4KHz、600Hzに周波数が下がっていく様子が測定されています。

▼ φ1

近づいてくる段階で0.1、間近で0.2、着陸時と数値は同じ。発生する時間は違いますが、着陸と良く似た波形の部分があります。平和公園で上空を通り過ぎたときのグラフと、観測点を中心に考えてみると、φ1の経緯は全体的にそっくりです。通過する高さが違うだけのようです。もっとも平和公園もここから直線で約20kmの距離。ジェット機では3分の距離です。

▼ IACC

観測ポイントが今回は特殊で、ジェット機が左前方から右後方に進みます。それを観測点通過後マイクが追っているのでこのような経緯になります。機体がマイクの前方で、IACCの値が大きくなり、ほぼ斜め前で最低の値となることをあらわしています。

▼ τIACC

マイクと音源の角度をあらわしています。完全に正対していればゼロになります。

2004年8月8日加筆分開始

まずRAのランニングACF画面で、実際の音を再生してみます。

このデータは全体的にクリアでいい録音です。ジェット旅客機は着陸態勢にはいり、滑空の最終的な段階で、飛行場の導入路の直前です。測定しているところの地形的問題で、ジェット機自体が家並みに隠れる5秒あたりで、いったん音が小さくなり、そこから出現する6秒あたりからは非常に大きな急接近を思わせる音質になります。12秒あたりで真上を通過し、通過していくのですが16秒あたりで少しひずんだ音(雑音)があります。それを調べるために、拡大のための虫眼鏡のプラスボタンをクリックして、32倍に拡大してその場所を調べてみました。

すると、上の画像から、15.64秒から15.65秒あたりと、15.91秒から15.96びょうにかけてあきらかにデータが変な場所があります。このデータを全部調べてみましたが、ほかには変な場所がありませんので、この場合はデータをここの手前までで、短くカットしておきます。

ここでは、倍率を戻して、左の端0から15.2秒が青い帯で範囲指定してあります。このやり方は右クリックしてドラッグします。私の場合はX軸上15.2秒のところを、マウスで右クリックします。そうすると、マウスのカーソルの形が、範囲指定の幅のマークにかわります。そして左の端0までをドラッグして範囲指定します。そうすると、その範囲指定された区間は青い帯の幅で指定されます。そうしておいてCUT(切り抜き)すれば、ちょうど開始のゼロ秒から15.2秒のデータとして、データ編がつくれます。

この場合、おかしなデータ部分をはずすのに使用しました。この方法は、グラフ表示の範囲内で、あくまで見える範囲で冗長な後ろの部分をはずしたり。同じく前の部分をはずしたり、開始と、終了を指定してその区間のデータを作るのに使用できます。DSSF3の編集機能は、必要最小限です。もっと必要な方は、専門ソフトを連携して使用することにより、さらにテクニックを駆使した測定が可能になります。

(補足)DSSF3は、WAVEファイルが入出力できるので、一般的な、音楽編集プログラムを活用するために、データを取り出したり、そのデータを取り込んだりできます。DSSF3は、できるだけ測定専門の部分(自動測定、データ計算出力)に特化して、いろいろな専門のソフトと連携できるように、考えられています。同じように各種データを、テキストファイル出力することによりドキュメントや、統計、各種計測なども可能にするようにも考えられています

 

騒音計が95dBAを示しているときの分析を行ってみます。SAに読み込んで分析を行ってみました。条件は今までと同じです。青色の帯はこのWAVE表示のグラフの中の指定したい位置をマウスで左のダブルクリックするとダイレクトに開始位置が指定できます。青い帯の範囲は積分時間でこの場合2秒になっています。つまりこの場合、アナログレベルで、振幅最大地点を中心に前後1秒の間分析範囲に指定しています。

この区間をスペクトラム分析を行ってみると、前のwAVEの振幅ではひずまない範囲のレベルを示していますが、ここの周波数が最大音圧レベルのところでー40dBAと、小さな値です。これはジェット機の騒音が広い周波数範囲の成分を含んでいるためです。音質的にはピークとして代表周波数800Hz、下のほうに200Hz、さらに広い範囲の周波数成分としてひろうと、低いほうで25Hz、高域ではでは7KHzまで、ピーク周波数が広がっています。

下の測定画面は同区間のACF分析です。自己相関のグラフの最初のピークτ1 1.29msec は、1000/1.29 で計算するとこの場合代表周波数775Hzです。

ジェット機騒音の通常の騒音源と違う性質は、ジェット噴射により、鳴門海峡の渦潮のような、渦巻状の音源を作り出すこと。またその渦巻きは低周波を発生し、飛行機は飛行機の速度により、低周波の音源を後ろに広域に撒き散らす性質を持ってるということです。

 

これはこの測定上では12-14 msec,24-26msec などにも、90msec 11Hz , 142mse 6Hz にもACFの山があるのが航空機騒音の特徴です。これはノイズではありません。FFT分析などでは分析できないACF分析だけが分析できる低域分析です。

(参考)

ジェット騒音は、高速で噴出した流体が静止した空気との境界で発生します。その粘性のために乱れの一つ一つが音源になります。ノズルに近い部分は乱流域の乱れが細かく、高周波音を発生します。遠い部分の乱流域では、流速の減少とともに次第に大きくなって低周波音を発生します。そのため、ジェット流によって発生する音は広帯域のランダム騒音です。

 

代表周波数は、ノズルにおける流出速度に比例し、ノズルの直径に反比例し、騒音の強さは流出速度の8乗に比例します。音速以下で流速が2倍になると音圧レベルは24dB大きくなります。
(参考資料:「騒音・振動(上)」子安 勝編 ISBN 4-339-00353-0)

 

以下はτ1、代表周波数がY軸に測定経過時間がX軸表示されています。このグラフは最初、実際の耳で聞いた音質の変化と、等価なグラフです。実際に代表周波数700HZは、ジェット機のいないときの音色とそんなに違いません。飛行場の周りでは常にそのような音色の雑踏のノイズで埋もれています。そのためジェット機がいなくなれば、τ1はそういう値に戻ります。ただ、ジェット機の真下のこの代表周波数と、いないときの静寂の代表周波数では同じでも、この迫力はまったく違います。測定開始1秒までの代表周波数2KHZは、エンジンの回転数が高い早いときのジェット機の前のジェット機のファンの回転音です。それが2秒から10秒まで。代表周波数900Hzくらいなのは着陸で、回転数を絞っているからです。

 

最後に高周波の分析を行います。高周波は高解像度分析が必要で、積分時間2秒では、測定できません。なぜなら、持続時間が短いのです。適切に測定すれば、ひとつひとつは強い音圧レベルを出しています。

前の参考から、ジェット騒音は、高速で噴出した流体が静止した空気との境界で発生します。その粘性のために乱れの一つ一つが音源になります。ノズルに近い部分は乱流域の乱れが細かく、高周波音を発生します。 これがここで測定する高周波の発生原因です。

 

ジェット旅客機着陸音の高周波成分の分析
(航空機騒音分析テスト9)の計算条件です。

 

同じくτ1のグラフです。この場合はY軸が音のピッチです。X軸が測定経過時間です。この場合ジェット機の通過以降に低い値 0.18msec 聴感上の6KHzのピッチなどが12秒以降のジェット旅客機通過以降に多く分析されています。

実は、飛行場周りの騒音は1msec 1KHzくらいのピッチは持っています。白色騒音的にすべての周波数を持っているからです。ただ、低周波のときと同様に、静寂なときのピッチ1KhHzと、ジェット機の真下のピッチ6KHZは、まったく違います。

最先端研究

ACFから算出できる音響パラメーターを使用しての音響分析の方法や、研究については数多くの論文や発表が行われています。

2004年8月8日加筆分終了

 

January 2002 by Masatsugu Sakurai