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インターネットを利用した医学のための生体音響分析・診断システム

臨床診断において、聴診は心臓疾患や肺疾患の発見に非常に有効であるばかりでなく、医療の基本といえるくらい重要であることが認識されている。 インターネットを利用して遠隔診断を行うことは有意義とされ、研究されてきたが、従来の方法では、44kHz(CDに相当)といった高いサンプルレートが要求されるため、双方に高性能な通信設備が必要であり、高コストと通信負荷が実用化を阻んできた。 当社の技術を利用して、ランニングステップ1 msecで多次元分析を行った場合、心音や肺音の分析データは、0.8秒間で800個のデータになる。 また、全データを送るのではなく、必要部分を抽出することで、電子メール程度のデータ量で医療用の音声のネットワークが実現できると考えられる。 これが今回の提案の研究開発である。 本提案の中には、高度な音響測定や、音響信号からの空間分析技術を利用して、生体が発する様々な音響信号を分析可能な生体音響分析装置の開発が含まれている。 MRIを利用した3次元人体マップなどの画像処理ではできないといわれている実際の動きのシミュレーションを、音を利用して行うことへの応用も期待できる。

患者を診察する場合、問診(病歴などを聞く)、視診、触診、聴診、打診、血液検査、画像検査などを行い総合的に診断するといわれます。 その診察で、やはり最も大きいのは、問診、視診、触診、聴診、打診などです。 患者さんに対面して行う質問や、様態や顔色や症状を目で見て分析したり、体内の臓器などを押してみたりして、触診や、心音や、肺音などを聞いたり、異常な音を探したり、 また、体に手をつけて叩いてみて、音の響きで中の状態を探る打診など、すべて重要で、それらができないと、やはり正確な診断は出来ないようです。

そのため、インターネットなどの医療相談は実際それらの重要な情報を無しで行うため、インターネットによる医療相談などではやはり確かなことはいえないので、 参考にしてくださいという注意が書いてあります。 「インターネットで提供されている主な医療相談ホームページ」 より

ただ、インターネット上での医療相談サイトは非常に便利で、ありがたいものです。このシステムが少しでも、正確な診断に役立つことがその結果、遠隔診療や、 在宅治療、老人介護や、過疎地域、離れ小島、山、船、飛行機、設備の整っていない病院や、応急、救急治療の現場、事故現場、突然昏睡した人への応急手当などで、 インターネットを使用して、医療を助けることが目標です。

医療相談はインターネットで、最も望まれているサービスです。


(図1)自宅で利用したい情報通信サービス
出所:1998年度『通信白書』(http//www.mpt.go.jp/plicyreports)

今までの在宅治療、遠隔治療などの取り組みは、ずいぶん行われてきましたが、現状定着しているかといえば、否としかいえません。
ほとんどが国などの助成期間が終了すると、取り組み自体が終了してしまいます。 その理由として、社会保険が利かない、コストがかさみ、それを医者側も、患者側も負担しきれない、非常に大掛かりな装置や、仕組みが必要、取り扱いがむつかしくて、品質が悪いなどです。 コストなどでは、衛星を使用した手術システムは、億単位の設置費用と、月に60万円の通信費用が必要といわれています。

地域病院(基幹病院)の視点  鹿教湯三才山病院長 小林俊夫先生に訊く

遠隔診療の問題点は何ですか?

「問題点はかなりはっきりしています。まず一点は機器設置等のための費用が高すぎることです。病院で約300万、患者宅で150~160万の設備価格は負担としては大きすぎます。」

「ある一定期間だけ必要となる重症患者さんなどは、価格に見合うだけのメリットがありません。できればリース等で貸出しが行われるとよいでしょう。」

「行政のしかるべきサポートがあってもよいのですが、まだ実現していません。」

「回線の費用も安くありません。しかもISDNの容量は小さく、人間の動作にはついていけません。早く歩いたりするすばやい動きにも対応できないのではとても普及は見込めません。」

「心音や呼吸音を聴取することは診察において重要なポイントですが、使用している機材では雑音がひどく実用性がないのも問題です。」

「ただ聴診器は体にあてればよいというものでもなく、取り扱いをよく理解している者でないと意味がないので、患者さんやヘルパーさんが用いて心音を採取して送信するというのは、もともとむずかしいことではあるのですが。」

「いくら時間をかけて診察をしても、現時点ではお金になりません。それゆえに、忙しいという事情もありますが、経営上の観点からは遠隔診療を他の医師に任せることができず、院長自身が遠隔医療実施の責任者・担当者とならざるを得ません。保険請求ができ、適正な医療報酬が得られることが必要です。」

平成13年に鹿教湯三才山病院は遠隔診療システムの導入を行なった。同院が遠隔診療に携わるきっかけとなったのは、信州大学病院第一内科で昭和61年に慢性肺気腫と診断された男性が在宅酸素療法の適用となり、平成10年7月より三才山病院がその患者の在宅診療を引継いだことに端を発している。在宅ケアの安定と充実をはかる目的で遠隔診療支援システムの試験運用が始められ今日に至っている。
現在同病院では上述の男性と、もう一人別の男性患者に対してリアルタイムのデジタル通信回線でむすんだ遠隔診療支援システムを用いた在宅診療を行っている。今回はこのうち慢性肺気腫の78才の男性患者(Kさん)の在宅診療状況を対象にするかたちで、運用の現状を伺った。

インターネットが発展し、光ファイバー、ブロードバンドなどが進み、遠隔診療、在宅診療など行われてもいいのですが、試験研究的な試みは、国の助成が終了すると全部が終了してしまいます。  「総務省通信白書 医療福祉」 より。

たとえば問診などにしても、問診が先か、視診が先か、聴診が先か、打診が先か、一概に決められません。 ものごとの順番はあることの反応により、次々と、必要なことが決まることが多いものです。 そうなると、電話だけがあるとか、テレビ電話だけがあるとか、FAXの設備があるとか、コンピューターで画像が共有できるとか、カルテが共有できるとかいうのは、その部分では便利ですが、 遠隔診療や、在宅診療を可能にする技術ということは出来ません。 それだけをどんなに進めていても、その比重が全体から見て数パーセントしか果たさないのであれば、それが決定的な要因になることがありえないからです。

問診を、電話やインターネット電話で行うにしても、あるいはそれがテレビ電話になっても、視診をテレビ電話で行う、ビデオ装置で行う、特別なカメラで行う。 触診は、本人にさわてもらって聴くのでしょうか?聴診はどうするのでしょうか?打診はどうするのでしょうか? あいかわらず、それらを別々に、あるいはその中のひとつだけを研究して、少しでも役に立つからと研究しても、今までの大方のプロジェクトのように、根本的な解決にはなりません。

ここで、非常に重大といわれる、聴診と、多くの病気や異常との関係を、あげておきます。

聴診によって多くの病気や異常を診察できるといいます。

首など聴診して何が聞こえる?とお思いかもしれませんが、首の音にはたくさんの情報が含まれています。病気の診断ができなくても、どんな病気の危険があるかなどが推測できるそうです。

  1. 肺に関係する気管支の異常については、気管支に腫瘍があると、気管を通過する空気が異常な「風音」を出すとのこと、気管支腫瘍は喉仏の聴診でわかるそうです。 音の特徴としては肺の聴診3で分析を行った 音声(いびき音)です。これは 笛音より低音性の音はグーといったかんじの250msec以上の持続時間の音です。

    いびき音  いびき音(異常)の測定分析(肺の聴診3)

  2. 血管の異常については、首で頚動脈の血管の音を聞けば、心臓から脳に血液を送る太い血管である頚動脈が動脈硬化をおこしたり、手術や、検査の合併症として脳梗塞を起こすことがあるそうです。 これは肺の聴診5のように喉仏の横あたりに聴診器を当てて音を聞くと、動脈硬化の場合はビュンビュンと高速道路を走る車のような音が聞こえるそうです。また音の程度により硬化の程度まで判断が可能だそうです。 逆に正常な血管であれば、このような音が聞こえることはないそうです。脳梗塞を起こしたことがある人、高血圧や糖尿病、肥満など、脳梗塞の危険度が高い人は、診察の時に聞いてもらうとよいでしょう。 硬化症がある人は、頚動脈の超音波検査などで硬化の程度を調べ、必要に応じて治療をします。逆に聴診で異常がなければ通常は検査の必要はないといわれています。

胸の聴診はとても一般的です。胸で音を出す臓器は肺と心臓の2つですが、他の病気が診断できることもあります。肺と心臓の音は、単純なようで実はとても複雑です。経験のある医師とない医師では診察だけで診断できる範囲に大きな差があります。病気がないことは聴診だけである程度わかりますが、病気がないことがわかるだけでも、大きな貢献です。病気がある場合には、治療が複雑になることが多いため、さまざまな二次的な検査が必要になります。

  1. 肺炎
    肺に細菌やウィルスが感染し、繁殖した状態です。 呼吸音の状態から、肺炎の程度(重症度)や原因菌などについて診断することができます、音の特徴としては肺の聴診2で分析を行った、音声(水泡音)です。 咳と行わせると減弱、消失したり、聴取部位が変化することが多い。肺炎、結核の症状です。正確には気管支炎、肺炎、肺結核、肺梗塞、肺化膿症、肺うっ血、肺水腫、気管支拡張症などで聴取されます。音はプツプツ、プチプチという音です。持続時間は10~25msecです。もうひとつは音の特徴としては肺の聴診3で分析を行った捻髪音です。これはパリパリ、プチプチといったかんじの短かい5msec以下の持続時間の音です。

    水泡音  水泡音(異常)の測定分析(肺の聴診2)

    捻髪音  捻髪音(異常)の測定分析(肺の聴診3)

  2. 肺気腫
    肺気腫とは、肺に大きな空気の袋のようなものができてしまい、その結果、有効な肺活量が低下して呼吸機能が悪くなる病気です。タバコを吸う方に多く、近年増えてきています。聴診で肺気腫を疑うことができます。診断にはレントゲン検査が必要です。
  3. 気管支喘息
    特徴的な音が聞こえます。簡単に診断できます。聴診がもっとも感度の高い診断方法かもしれません。これは、ぜひ分析が必要です。音の特徴としては肺の聴診3で分析を行った音声(笛音)です。これは 気管支喘息患者に特徴的なラ音といわれています。気管支喘息や気管支狭窄の症状で、肺野全体に聴かれ、頸部に最強点があります。気管支喘息以外にも、腫大リンパ節や縦隔腫瘍による、外部からの圧迫、気管支癌、滲出物や粘膜の炎症による気管支内腔の狭窄によって、聴こえます。音はギューといったかんじの持続時間250msec以上の音です。

    笛音  笛音(異常)の測定分析(肺の聴診3)

  4. 気胸
    肺に穴が空いて、しぼんでしまった状態です。呼吸音が聞こえなくなるので、すぐに診断できますし、レントゲンなどをとってぐずぐずしていたら、呼吸困難が急に進行してショックになったりすることもあるので、これは聴診だけで診断すべき病気です。
  5. 胸膜炎
    胸膜とは、肺を覆っている膜のことです。この膜に細菌が感染したりして炎症が起こった状態が胸膜炎ですが、これは聴診で診断することができます。
  6. 心不全
    心臓の機能が低下し、全身の血液の流れが滞った状態です。血液は肺や皮膚などにたまり、聴診を含む全身診察で診断できます。心不全の程度まで聴診でわかります。
  7. 弁膜症
    心臓には血液を一方に送りつづけるはたらきがありますが、血液が逆流せずに、つねに一定方向に流れるよう、各部に弁という逆流防止の仕組みがあります。この弁がこわれたり、硬くなったりすると、血液が流れにくくなったり逆流したりして、最終的には心不全になってしまいます。心臓には4つの弁がありますが、どの弁の調子が悪いのか、それは壊れているのか、あるいは硬くなっているのか、などを判断することができます。

    僧帽弁狭窄症


    僧帽弁閉鎖不全症


    以上二例とも、心尖部のI音とII音(正常)、心基部のI音とII音(正常)、亢進したI音(異常)、I音の減弱(異常)(心音測定8)

  8. 先天性心臓病
    生まれつきの心臓病の多くは特徴的な心音があります。聴診によって診断することができます。
  9. 不整脈
    脈の打ち方が規則正しくなくなるものです。多くの場合は軽症で放置しておいて良いものですが、稀に突然死につながる危険なタイプの不整脈もあるので注意が必要です。 これは脈をとってもよいのですが、聴診でももちろん診断できるそうです。
  10. 心膜炎
    心膜とは、心臓の周囲を覆っている袋のような膜です。ここで炎症が起こると、心臓の動きが悪くなり、心不全になることがあります。心膜炎も聴診で診断できるそうです。

おなかは聴診器をあてると、とてもにぎやかなところです。そのにぎやかさや音の状態から、胃腸をはじめとする腹部臓器の状態を推し量ることができます。病気でなくても、おなかの臓器の機能を把握することができます。たとえば、この人は便秘がちだ、とか、ちょっと動脈硬化が強そうだ、などということを推測できます。

  1. 腸閉塞
    腸の動きは聴診で非常によくわかります。腸閉塞は、腸の動きに大きな影響をあたえます。腸閉塞の診断において、聴診は一番重要な方法です。何が原因で、どのような閉塞状態になっているのか、ということまで推測することができるそうです。
  2. 腸炎
    腸に炎症があり、下痢をしているような状態では聴診しなくても診断はできますが・・・これもわかるそうです。
  3. 大動脈縮窄症
    おなかのなかでもっとも太い血管(腹部大動脈)が狭くなっている状態です。聴診によって診断できるそうですが、治療には手術を要することもあるので、これが疑われたら、必要な検査を受けなければなりません。
  4. その他の腹部血管の異常
    聴診によって、血管雑音と呼ばれる異常な音を聴くことができるそうです。

音は、聴診にだけしか役立たないかといえば、実は音は幅広く応用が可能です。 その範囲は問診、聴診だけに有効というのは適切ではなく、打診にも、さらに活用すれば、触診、視診までに応用できますというべきです。
高速道路などの、コンクリートの鬆の調査に、音が利用される場合、あるいは超音波で、内臓の外観が描かれるのを思い出してください。 こうもりやふくろう等、真っ暗な世界の生き物は超短波などを使用して、外部の状況をつかんでいます。
また海のシャチやいるか等はやはり音をレーダーや、コミュニケーションなど広く応用しています。
その理由は音の響きや異音や、音の間隔、強さなどで、そのものの動作や、位置や、動きや、状態をつかむことが出来るからです。

 

  測定開始後
(秒)
Phi(0)
(dB)
Tau_1
(msec)
Phi_1 Tau_e
(msec)
備考
1 1.783 -15.06 4.42 0.73 1.43 I 音の最大音圧ポイント  僧帽弁の閉じる音
2 1.865 -20.36 0.07 1 6.05 I 音の次の音圧ピーク  三尖弁の閉じる音
3 1.909 - - - - 不明
4 2.067 -18.73 0.05 1 8.94 II 音の最大音圧ポイント  大動脈弁の閉じる音
5 2.102 -20.57 0.07 1 9.79 II 音の次のピーク  肺動脈弁の閉じる音

積分時間4msec、ランニングステップ1msecは心臓の弁や心臓の動きともに、前回より精密に分析できるようです。 ただ、最大音圧レベルのポイントが弁の閉まるところの点と、その音圧レベルが一定で音の大きさで、どの弁かがわかります。三尖弁と肺動脈弁は、ほぼ同じ音の大きさです。

音圧レベルで、僧帽弁>動脈弁>三尖弁>肺動脈弁

僧帽弁の最大音圧レベルで、はっきりしています。また I 音として僧帽弁の次に三尖弁の音がして、その次に、大動脈弁の音がきて、その後、肺動脈弁の音が来るという順番がわかっていれば、 どの音がどの弁なのかという同定は簡単です。また、弁の閉じる音ですが、閉じる瞬間に音の高さが鋭く変化しています。一定の音の高さをもっているものとは根本的に異質です。

今回の計算条件変更の目的は、弁の動作タイミングを誤差1msec以内にするためです。平均は積分時間を4msecに短くしました。「心音測定3」で積分時間2msec、遅れ時間20msecの分析行いましたが、 積分時間、遅れ時間ともに若干短すぎると感じました。そのため遅れ時間を20msecから80msecに増やし、積分時間は2msecから4msecに増やし、分析間隔はそのまま同じ1msecにしました。 結果としては大体満足です。解析しやすく、精度が大幅に上がり、それぞれの弁の動作タイミングは、ほぼ正確に1msecの精度で分析できていると考えることができます。

心臓や、脳は、細胞が入れ替わらない臓器です。人間は生まれたときから同じ数の細胞を持ちそれらの細胞は大きくなりながら、休まず動きつづけ100年間以上、あえて壊さなければ大丈夫の耐久力を持っています。細胞が入れ替わらないため一度だめになっても再生しません.そういう丈夫な心臓や脳、にとっての唯一最大の敵は血管の動脈硬化です。動脈硬化、脳梗塞など一度起こすと、たとえば死んだ脳、心臓の細胞は、再生されないため、その部分が永久にだめになってしまいます。一生植物人間になるのもこのケースです。また血液が、送られないと、体の各部所が死んだ状態になってしまいます。もちろん脳もです。心臓の弁の1msecの精度での音響を使用しての動作分析は、4つの弁の測定データから動脈硬化の進め具合や、心臓や脳のみならず眼や,耳や全身の血管のなかで破裂の原因になるやわらかく膨らむ個所や、詰まった異常をつかむことができます。それにより脳梗塞の起こる危険性や、進み具合をチェックできます。これにより予防や,治療につなげることができます。

 

この精度で伝送を約束する
 

音圧レベルや、音の響き成分の有効時間は、音源の運動状態を表します。その分析のためには、すべての音の情報がシームレスに必要となります。

実際ステレオ装置では、明確に楽器や歌手の場所が認識でき、人間は目をつぶっても、良く耳を澄ませば、水の滴る音から水滴の落ちる場所を認識することができます。

方向情報は、2CHの場合、片方の、もう1方に対する遅れ時間を計算することによって求めます。

これらの音のたくさんの情報を効果的に利用する、高時間分解能な分析や、空間情報、運動情報の伝達という点において、インターネットですら、 正確な音情報の伝達ということについてはまったく遅れています。

時間分解能を変化させると、分析が違ってきます。

高時間分解能分析:従来の音響分析は周波数にとらわれすぎて、時間軸上の分析が未開発であった。特に生体音は時間的な変動が大きく非定常な信号であり、 継続時間の短いインパルス性の信号や緩やかに変動する呼吸成分など様々な時間周期の信号を含むため、これらの詳細な時間変動を的確に捉える技術が求められる。 例えば図1は同じ心音を0.1秒(左)と0.01秒(右)の時間分解能で分析した音圧レベルの時間変化であるが、右の図では心音に特徴的な弁の開閉音や心雑音を的確に捉えている事がわかる。 このように、新技術は1msオーダーの高時間分解能での分析によって、より詳細な音響信号の時間変動を捕らえることを目標とする。 また、音響分析の時間解像度を向上させるためには大量のデータを高速に処理する必要があるが、音響信号の特徴を次に述べる相関分析によって処理する本提案の方式は、 データの圧縮率と音響特徴量の単純さによって従来の手法と比べて技術的な優位性があると考える。 本研究開発においては特に、心臓、肺、腹部など多様な診断部位についてそれぞれ最適な精度で自動計測を行うための基礎研究として正常時と異常時の聴診音のデータ取得、 音響分析を詳細に行い、自動計測のプログラムを開発する。

図1.心音の分析例(左は0.1秒、右は0.01秒の分解能で分析)

それも、現状では音をそのまま音声だけのために、言葉や音楽を楽しむためだけに伝送するのみで、そこでの音質の問題は単純にネットワークを高速化、大容量化すれば解決する問題であると考えられている。 つまり、光通信や、ブロードバンドがすべてを解決するとしている、それが最大の過ちである。

 
WSJ-米地域通信大手3社、光ファイバーに活路を見いだす(ダウ・ジョーンズ)

住宅向け光ファイバーに注力することにはリスクもある。具体的には、 米国の大半の家庭に光ファイバーを引くには、最長25年かかり、数百億ドルかかる見 込みなことだ。地域通信会社は、1990年代の積極的な企業合併で膨らんだ債務を減ら す一方で、こうした大規模な計画を進めなければならないことになる。成功は、地域 通信会社が、光通信機器や敷設などのコストをいかに抑えられるかにかかっていると も言える。

3社の真の目的について懐疑的な向きは、新しい光ファイバー網に競争相手がアクセスするのを制限するために、地域通信業界側に有利な規則をFCCから引き出すことが目的ではないか、と指摘する。こうした規則がいったん導入されれば、地域通信会社は、時間をかけて徐々に光ファイバー網を構築する戦略に後退するのではないか、と懐疑的な向きはみている。

米国では住宅向け光ファイバーが20年前から存在しているが、地域通信会社は、高コストを理由に広範囲な導入には及び腰だった。現在、光ファイバーが引かれている家庭は、約3万8000世帯にすぎない。(ダウ・ジョーンズ)

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なぜならもともと現行のインターネットの通信方式ではリアルタイムな信号の伝送は無理で、その中継方式の基本的な構造から、根本的に音響データの遅延や途切れ、雑音の混入が避けられない。

実際、インターネットで、固定電話並みの音質をクリアするのは大変です。それは中継局が、時間的な遅れや、音の抜けをその仕組み上どうしても、かなりの量発生させるからです。 その量や時間は、生体音響の必要とする精度に対して、2桁以上の誤差があります。
たとえば3msecの心弁の動きに対して、100msecの誤差が限度です。そのため、言葉や音楽は何とか伝送できても、空間情報や精密な時間情報となると、伝送不可能です。 「インターネットの伝送品質」 より

実際にリアルタイムに分析の対象となる音を伝送することは無理である。インターネットを通じてリアルタイム転送されてくる音は大きく情報が間違ってきているので、あるいは、 大事な部分が欠如していて使い物にならない。

また圧縮されたデータも、非常に重要な情報がなくなっていて使い物にならない。ここには生体音響をカバーする、通信のやり方のプロトコルを新たに作り出す必要があります。 通信は電話のように、離れた通信する両者が、そのプロトコルに従って、通信手順を守らないと正しくできないからです。

それらのプロトコルを作成しないと今のインターネットの設備ではだめで、すべての設備や規格を見直さなくてはいけない。
しかし、それは費用の面でも、効率の面でも、今、現実の打開策ではなく、得策ではない。こんなに広く、しかも安価に発展している、インターネットの仕組みをそのまま使用できる伝送手段の開発が必要です。

通信する両方に、音響を分析し、必要な音響パラメーターを正確に伝送するプロトコルが必要です。リアルタイムに送られてきたデータは分析の役に立つものではなくなってしまっているので、 かわるものに関しては送る前に分析して送る考え方です。

音のデータの連続性や、時間タイミングは、通常のインターネット伝送では、変わってしまうので、最初に分析しておきます。
単位時間あたりの音圧レベルや、響き成分の有効持続時間などの音響パラメーターも、伝送前に測定しておきます。

その場合、単位時間は、測定対象により変化しますので、要求により、お互いに連絡しあって、同期する仕掛けが必要です。
そこを満足すれば、必要な注意を払うところに耳を澄ます、使える音の環境がそろうことになります。

それも同定のテンプレートを拡張した、通信制御のためのテンプレートを両方が持っている、あるいは、片方から使用するテンプレートを送信して、それで準備が整ってから、 正確な音の伝送を行うように使用します。

自己相関/相互相関分析:従来の音響分析は周波数スペクトルの特徴を求めることが主であったが、スペクトルを表現するパラメータのなかには聴感上は重要でないものが多く含まれている。 また暗騒音や残響によって大きく形状が変化するスペクトルを分析することには限界がある。それに対して、新技術が利用する相関分析は聴覚機能モデルに基づいており、音に含まれる特徴を、 その音を人間が聞いた場合に極めて近い形で捕らえることが可能である。音の強さ、音の高さ(ピッチ)、音色、響き成分の持続時間といった音質に関する情報と、音源の位置、 移動など音源が持つ空間的な情報の時間変化を分析することが可能となる。自己相関関数は本来、雑音に埋もれた信号成分を取り出す目的に適した分析手法であるが、 分析信号が明確な周期性を持たない場合についても自己相関関数の減衰性状によって音源を特徴づけることが可能である。さらに重要な点としては、 本方式によれば少数のパラメータで測定対象の音響特徴を的確に表現することができるため、測定データの伝送や音響データベースの構築に有利になると考えられる。 在宅医療などで必要な継続的な測定においては常時音声データを送りつづける必要があり、一度に多数の患者を診察するような状況を考えると伝送容量がどれだけ大きくなっても対応できなくなる。 生体音響分析システムによって診察に必要な音を分析し、重要な要素のみを抽出する本提案のような技術が必要になると考える。 これまでに心音や肺音のサンプル音源について分析を行い本方式の有効性を検証してきた。今回はさらに大規模なデータを取得して音響分析による診断の有効性を実用化のレベルまで向上することを目標とする。

今、DSSF3はある程度、遠隔診療や在宅治療、応急治療などに使用することできます。
たとえば、A病院、B病院、2箇所の病院にDSSF3があったとします。ひとつのA病院で、分析したRAのデータをもうひとつのB病院のSAに送ると、 AB両病院で全く同じ環境で分析を行うことができます。

これが山の上C地点や、船の中D位置や、飛行機Eポイントでも、携帯をインターネット接続に使用して以上の作業ができます。
常時接続であれば、さらに簡単に、また専用回線サービスが受けられればLANの機能で隣のパソコンと、データを共有するような手軽さでこれら実現できます。 これはDSSF3バージョン5がマイクロソフトの.net環境で開発されているからです。

ただ、DSSF3はパソコンですから、理論的にはできても、実用は難しいでしょう。
またテンプレートにしたがって、分析を自動的に必要なほうから、測定現場に要請を出し、リモートで制御するような部分は未開発です。 そのため、必要な機能はたくさんあります。
それらがもっと用意されないと、使いやすくはありません。

テレマテックス 遠隔診療の種類(参考) 

研究開発全体の内容

本研究は大きく4つにわかれる。

一つは小型聴診マイクを付属させた、図の左上の簡易監視装置である。
これは、誰でも簡単に利用できるインターネット端末として、測定結果を記録するレコーダー、音響パラメータの計算プログラム、データ送信プログラム、 ホストからの結果報告を受信するプログラムを内蔵している。計算プログラムや送信プログラムの動作制御条件は、測定対象毎のテンプレートという形で定められる。 テンプレートを替えれば何にでも対応できるような、定義ファイルを想定している。測定ソフトや計算ソフトやテンプレート等は、インターネットを利用したオンラインアップデートによって、 手軽に最新に保たれる。具体的利用法として、簡易監視装置を使用して、10数秒間測定して分析を行い、必要データをホストにある分析システムに送る。ネットワーク負荷が少ないため、 連続使用あるいは大勢の人が同時に使用することが可能である。
二つ目は、高性能な自動監視装置である。通常のWINDOWSのパソコンで自己相関、相互相関分析を使用し、時間軸上の高時間分解能分析を使用して、音響信号からたくさんの情報を取得し、 そこから重要な音響パラメータを分析し、効率的な通信や分析を制御するための目的単位にテンプレートを作成することを目標とする。
三つ目は、生体音響分析システムと、心音肺音、テンプレートの情報を含むサーバーシステムである。端末サイドに対して利用目的ごとにサポートするためのものである。
最後の一つはそれらを結ぶインターネットネットワークである。非常にデータ量が多くて負荷が重いため難しいとされる、音声データをメール並に気軽に扱うためには、そのための技術の確立が必要である。 音の必要情報を取り出し、それを明確にすることによって、伝送量を減らし効率的なネットワークを確立することが本研究開発の大きな目的である。

簡易監視装置 自動監視装置
  (高性能測定研究用)
低コスト
安全性

また、分析結果と、実際の病気との関係、などの詳しい情報を、共同利用を考えると、A病院で臨床データが得られればそれは当然、B病院でも利用できたほうがいいでしょうし、 お医者さんがたとえ、どこの病院に勤めていても、どこの患者の方を突然見ることになっても、それらを遠隔診療、在宅診療の制度と、あわせて進めていく必要があります。

ネットワークを利用した音響データベース構築 :音による診断(聴診)の現状は、重要な病気に特有な音の特徴を聞いて覚えるという勘と経験に頼るものであり、経験の浅い医師の場合では特に誤診が多いことが問題となっている。 新技術を利用すれば、後述のように生体音に含まれる特徴的な音響成分を正確に捉えることができるため診断を的確に支援することができる。さらに音声認識で確立されてきた手法を応用し、 測定中のデータを正常時に蓄えたデータと比較することで異常を発見することが可能となる。最終的には、生体音に関するあらゆる情報をデータベース化することが可能であり、 このデータベースをネットワーク上に構築することによって医療・研究の支援や遠隔診療に貢献することが可能である。本研究開発においては特に、 測定端末の開発とサーバーシステムによる音響診断ネットワークの構築を目標とする。例えば心音の測定端末は生体音響データベースにアクセスして測定データを提供し、 同時にデータベースに蓄えられた心音に関するデータや肺音など他の部位の測定データも利用できる。データベースは一種の医療音響辞典のような役割を果たすものと位置付けられる。 既存の遠隔医療システムではX線やCTの画像や聴診音をそのまま伝送して、その情報を医師が見たり聞いたりして診断する方法が主流であるが、 この場合データ容量が膨大になるため高速通信網の拡充が大きな課題となっていおり、また長期間におよぶ医師の聴診訓練が必要なことには変わりない。ここから一歩進んだ診断形態として、 膨大な医療用の音響データから必要な情報のみを抽出し、既に蓄えられたデータを参照しながら診断する仕組みを提供するのが本研究開発の大きな目的である。

簡単な携帯電話並みの大きさの端末を用意すれば、とか、分析結果も、医療専用の使いやすい形で出てこないかということになると、現状の音響の診断システムというかたちとは、かなり内容が違う まったく開発のしなおしかもしれません。また、医療データのデータベースは公共の財産だから、インターネットのような資源管理を行い運営されるべきだとなると、民間でというより、 そういう機関を作りすすめるべき技術であると思います。

提案する研究開発の基盤技術性

影響度
遠隔治療や在宅医療などが普及するためには、医師による診断を支援する情報機器の研究開発が課題になると考えられる。 現在のところ、遠隔診断の主流はX線、CT、MRIなどによる画像診断であり、今回提案する「音による診断」は出遅れている感がある。 臨床診断においては、聴診や打診といった音による診断で疾患の75%が発見できるといわれるほど有効な診断技術であるにもかかわらず計算機による音響診断が遅れている理由は、 その根本となる分析技術と音声情報を扱うネットワーク技術が確立していないからだと考えられる。特に分析技術だけ見ても、従来の音響分析は周波数にとらわれすぎて、 時間軸上の分析が未開発であった。生体音の分析には、音響信号の詳細な時間変動を捉える技術が必要不可欠である。本研究開発課題によって基礎的な分析技術や診断技術が確立されれば、 医療分野に多大な貢献を与えるものと考える。

波及性
本研究開発成果の生体音響の分析技術は医療福祉分野全般において利用価値の高い技術であり、以下のように幅広い利用が見込まれる。
1.聴診システム:心音、呼吸音などを測定・分析して診断するシステムは臨床診断において極めて利用価 値が高く、幅広い利用が見込まれる。
2.健康管理システム:今後、家庭用の機器としての需要が高まると考えられる。
3.遠隔医療:1、2の技術をネットワーク化することで遠隔医療に貢献できる。
さらに、医療分野以外でも非常に応用性の高い技術であり、以下の利用分野が考えられる。
4.工業製品等の異常検査:モーターやファンなど音を発する機器の異常を音響分析により診断することが可能となる。
5.聴覚障害者支援システム:音源の位置や種類に関する情報を視覚的、または振動など聴覚以外の情 報に変換して提示することで、 聴覚障害者や高齢者が周囲の状況を察知できるような生活支援システムを構築できる。

また本研究開発成果のネットワークを利用した音響データベース構築を行う技術の確立は医療分野以外でも非常に応用性の高い技術であり、すべての音に対してそのまま対応が可能と考えられる。