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聴診器マイクによる肺胞呼吸音の測定
(肺の聴診4)

胸の聴診はとても一般的です。胸で音を出す臓器は肺と心臓の2つですが、他の病気が診断できることもあります。肺と心臓の音は、単純なようで実はとても複雑です。経験のある医師とない医師では診察だけで診断できる範囲に大きな差があります。病気がないことは聴診だけである程度わかりますが、病気がないことがわかるだけでも、大きな貢献です。病気がある場合には、治療が複雑になることが多いため、さまざまな二次的な検査が必要になります。ここで胸の聴診により診断可能な肺の関係の病気をまとめておきます。

1.肺炎
肺に細菌やウィルスが感染し、繁殖した状態です。 呼吸音の状態から、肺炎の程度(重症度)や原因菌などについて診断することができます、音の特徴としては「肺の聴診2」で分析を行った、音声(水泡音)です。 咳と行わせると減弱、消失したり、聴取部位が変化することが多い。肺炎、結核の症状です。正確には気管支炎、肺炎、肺結核、肺梗塞、肺化膿症、肺うっ血、肺水腫、気管支拡張症などで聴取されます。音はプツプツ、プチプチという音です。持続時間は10~25msecです。もうひとつは音の特徴としては肺の聴診3で分析を行った捻髪音です。これはパリパリ、プチプチといったかんじの短かい5msec以下の持続時間の音です。

2.肺気腫
肺気腫とは、肺に大きな空気の袋のようなものができてしまい、その結果、有効な肺活量が低下して呼吸機能が悪くなる病気です。タバコを吸う方に多く、近年増えてきています。聴診で肺気腫を疑うことができます。診断にはレントゲン検査が必要です。

3.気管支喘息
特徴のある音が聞こえます。簡単に診断できます。聴診がもっとも感度の高い診断方法かもしれません。これは、ぜひ分析が必要です。音の特徴としては「肺の聴診3」で分析を行った音声(笛音)です。これは 気管支喘息患者に特徴的なラ音といわれています。気管支喘息や気管支狭窄の症状で、肺野全体に聴かれ、頸部に最強点があります。気管支喘息以外にも、腫大リンパ節や縦隔腫瘍による、外部からの圧迫、気管支癌、滲出物や粘膜の炎症による気管支内腔の狭窄によって聴こえます。音はギューといったかんじの持続時間250msec以上の音です。

4.気胸 肺に穴が空いて、しぼんでしまった状態です。呼吸音が聞こえなくなるので、すぐに診断できますし、レントゲンなどをとってぐずぐずしていたら、呼吸困難が急に進行してショックになったりすることもあるので、これは聴診だけで診断すべき病気です。

5.胸膜炎
胸膜とは、肺を覆っている膜のことです。この膜に細菌が感染したりして炎症が起こった状態が胸膜炎ですが、これは聴診で診断することができます。

(ここまでの医療部分の知識は「医療機関の実践的利用法」を参考にさせていただきました)

今回は肺音の分析が目的ですが、肺、気管に異常の出る病気をまとめてみました。呼吸は止められますが、心臓は止められないので、肺音の分析には、どんなに抑えても心臓の音もはいっています。

心音計測用に作った聴診器マイクで測定してみました。肺音はS/N比を高く取らねばならないため、聴診器マイクをガムテープで身体に貼り付けました。

 
計測日 2003年4月9日
計測場所 愛知県名古屋市
被験者 50歳男性
マイク SONY ECM-T150 Electric Condenser Microphone
(寸法: 直径6mm / 長さ12mm)
マイクアンプ SONY DAT WALKMAN TCD-D100
パソコン DELL INSPIRON 5000e
OS Windows 2000 Professional
測定分析ソフト DSSF3 英語版
その他 聴診器
接続図
WAVE ファイル lung4.wav (44.1kHz / Mono / 10sec / 862KB)

無信号時のピークレベルモニターです。

マイクをDATに接続し、すべての機器の電源を入れた状態で、無入力時の暗騒音です。聴診器につけてあるので、マイクの感度がよく、周囲の雑音を拾うようです。感度を悪くすると肺音がうまく拾えないので、このレベルで調整しています。実際には、-28~35dBくらいの数値です。

DATのライン出力をノートパソコンのライン入力につないで、その音を測定するわけですから、Windowsの「ボリュームコントロール」の出力を調整します。

同じく録音(入力)を調整します。

ランニングCAF測定を行いました。

データを測定データベースに保存します。

WAVEファイルに出力しておきました。DSSF3からWAVEファイルに出力しました。44.1KHzサンプリングのモノラルデータです。Lch 出力です。

WAVEファイルを「ランニングACF」の画面で「読込(LOAD)」>「WAVEファイル」ボタンを押して読み込めば、この計測事例と同じことを行うことができます。WAVEファイルをご自分のパソコンにダウンロードするには、マウスの右ボタンでクリックして「対象をファイルに保存」を選び、適当な場所に保存してください。

SAでデータを読み込みました。

高時間解像度な分析のための計算条件です。

計算結果。音圧レベルの時間変化を表しています。10秒の測定時間です。

最初の1秒を時間軸でズームしています。肺音はずっとこんな感じで繰り返しています。おそらく心音も含まれているでしょうが、現時点ではこれにとどめます。

開始から測定開始後の1秒間の部分の音響パラメータのグラフ。ACFは最初のピーク0.255秒後のACFです。

10秒間の音響パラメーターのグラフ。ACFは最初のピーク0.255秒後のACFです。

April 2003 by Masatsugu Sakurai