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スピーカー位相チェック

ステレオアンプにスピーカーをつなぐときに極性をまちがえると逆位相になってしまいます.それをチェックするために「リアルタイムアナライザー」(RA)で見てみましょう.

 
マイクミキサー SONY MX-50
USB I/F Roland UA-5
パソコン SONY PCG-Z505GR/K
OS Microsoft Windows2000 Professional
測定ソフト Yoshimasa Electronic DSSF3

※下の写真ではUA-5ではなくUA-3という機材を使っていますが、この機材はトラブルが多く報告されており、お薦めできません。UA-5の方は動作確認が取れています。

 

 
ステレオアンプ audio-technica AT-SA55
スピーカー BOSE 101VM
マイクロホン SONY C-355

機材の準備ができたら「リアルタイムアナライザー」を立ち上げて「シグナルジェネレータ」と「オシロスコープ」を開きます.

DSSF3では「シグナルジェネレータ」の「トーン」で左右別々の周波数を出力することができます.スピーカーの位相を見るまえにこれで動作確認しておきましょう.

Lチャネルから800Hz,Rチャネルから1600Hzの正弦波をスピーカーから出し,その音をLRそれぞれのマイクから拾ってオシロスコープでリアルタイム表示したのが上図です.

水色のLチャネルに比べて,ピンクのRチャネルが2倍の周波数であることがわかります.それでは,つぎに実際のスピーカーの位相を見てみましょう.

 
これはスピーカーの接続が正しい場合です.
1kHzの正弦波をオシロスコープで見てもLRチャネルの位相が一致しています.
今度はLチャネルのスピーカーの極性をまちがえて接続した場合.
Lチャネルの正弦波が逆位相になっているのがわかります.こうなると互いのチャネルの音を打ち消し合ってしまいます.

こうしてオシロスコープで位相を見るのが通常のチェック方法ですが,DSSF3の「相関関数」を使ってもチェックすることができます.

「シグナルジェネレータ」と「リアルタイムアナライザー」の「相互相関」を開いてください.

上図はピンクノイズを「モノラル」(左右同相)出力した様子です.「相互相関関数」のグラフ中央が上向き(プラス)の山になっています.

ピンクノイズを「逆相」(左右逆相)にしたところ「相互相関関数」のグラフの山が下向き(マイナス)になりました.この特徴を使えばスピーカーの位相チェックもできます.(ちなみに「左右独立」というのは、左右で全く異なる(相関の無い)信号という意味です)

Lチャネルのスピーカーの極性を逆につないだ状態で「相互相関関数」を見てみました.

ピンクノイズはモノラル出力しているのに,グラフの山は下を向いています.これはスピーカーが逆位相になっているからです.

 

同相と逆相

1kHzのトーン(正弦波)の同相の場合と,左右の位相を180度変えて逆相にした音を用意しました.かならずステレオスピーカーでお聴きください.(wav形式ファイルの再生にはWindows Media Player等が必要です)

 
同相 (inphase.wav / 187KB)
逆相 (outphase.wav / 188KB)

同相の場合は音が正面に定位しますが,逆相の場合は定位がぼやけた感じになり,音色も若干変わります.

 

失敗談と注意点

「シグナルジェネレータ」の「トーン」で左右別々の周波数を出力してオシロスコープで見てもLRチャネルの波が分かれないのです.ありえないことだと思いつつ,散々悩んだ挙句「あ,VAIOだった」.

VAIOのマイク入力はモノラルなのです.だからステレオ入力のためにはUSBサウンドインターフェイスが必要だったことをきれいに忘れていました.音響測定用ノートPCを購入される場合は,ステレオ外部入力端子のある機種にしましょう.

今回のような計測の場合,マイクはワンポイントステレオマイクではなく,モノラルマイクを2本用意しましょう.マイク1本では左右のチャネルの音がまじって(クロストーク)うまく測定できないことがあります.

また,位相チェックを行うときは2本のマイクのスピーカからの距離を同じにしておく必要があります.たとえば1kHzの場合,波長は約34cmなのでその半分の17cm距離が異なるとスピーカの結線は正しくてもオシロで表示した波形は180度反転してしまいます.

 

用語説明

1) 自己相関関数
自己相関関数は、パワースペクトルのフーリエ変換として計算される。元来、雑音に埋もれた信号の検出に使用される分析手法であるが、最近の聴覚心理・生理学の研究により、人間の聴覚経路において自己相関に類似した処理がなされていることが明らかになりつつある。自己相関関数の重要な性質のひとつは信号に含まれる周期成分を精度良く検出できることであり、ピッチおよびピッチ強度と音色に深く関連するフォルマントの成分を容易に抽出できる。
2) 相互相関関数
左右の耳に到達する信号の類似度を表す関数である。相関度が最大となる時間から、音源の到来方向を推定できる。この情報を利用して空間的なフィルタを形成することで、目的の信号を分離することが可能になる。