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フェラーリ内でカーステレオ計測
(カーステレオ計測2)

第2回は、フェラーリでのカーステレオ計測です。

 

 
アイドリング時 cars21.wav (44.1kHz / Stereo / 8sec / 1,379KB)
「四季」再生時 cars22.wav (44.1kHz / Stereo / 8sec / 1,379KB)

アイドリング時の車内のメカニカルなノイズや、マフラーなどのエキゾースト系のノイズをまずランニングACF測定しました。車外でマフラーのうしろで排気音や、ミッドシップのエンジン音を録音した「自動車騒音分析テスト~フェラーリV8エンジンの排気音」が車内ではどう聞こえるかに興味をもったのです。エキゾーストノートは、ボディである程度防音しているため、車内と車外とでは違って聞こえるからです。それによって音質がどう変化したかを測定しました。次にエンジンを切って「VIVALDI IMUSICILE QUATTRO STAGIONI,OP.8 四季 PHCP-10101」の最初の部分「協奏曲第1番 ホ長調 RV269 春 ALLegro」(3分33秒)を流して分析しました。

SAに読み込んで再計算させます。この場合は aid01 というデータです。積分時間を2秒で、再計算させます。3~4分で計算できました。

直後に計測した、四季の最大音量を0dBとして、解析されていますので、-20dBAです。このS/Nは20dBAありますから、最大音量のときは音楽的に十分です。

残りのデータの時間推移のグラフです。

「カーステレオ計測1」で、レポートしたように、車外の騒音は58dBA(エンジンを切った状態)ありました。それに対して車内の暗騒音は36~39dBA(エンジンを切る、ドア、窓を締め切る)でした。室内は外より22dBA低い音圧レベルです。これは夜の居室なみに静かです。(22dBAの防音効果) ところがアイドリング時は逆に外の暗騒音より4.5dBA大きな音圧レベル62.5dBAです。これは通常のクルマ(VOLVOなど)の車外で聞くエンジン音に匹敵します。FERRARIの車外のエンジン音は75dBA以上とジェット機並みです。これが疲れる大きな理由でしょう。

▼アイドリング時
τ1 φ1 τe Φ(0)
車外 2.8msec 0.11 6-8msec 75dBA
車内 2.3msec 0.11 10-20msec 62.5dBA

τ1は2.3msです。自己相関関数の最初のピークの遅れ時間です。ピッチをあらわしています。これは周波数成分としては400Hzの音の高さです。これはミッドシップエンジンの車なので、エンジンが乗員の真後ろにあって近いことと、そもそもフェラーリV8エンジンの排気音(自動車騒音分析テスト)をアイドリング時に計測したときは、330Hzであったことからも想像できます。FERRARI V8 のアイドリング32msecの一番高いτ1のピークはこの排気音の一番低いピッチでエンジンの基本周波数を表わしています。この場合は、エンジンシリンダー内の爆発間隔を表すものです。1000/32=31.25Hzの排気音として出力されています。車内の場合は、27msecで37Hzです。V8エンジンのツインカムの8ビートの高さ37Hzの周波数成分の音です。この違いはエンジンの回転数の違いによるものです.基本周波数が変化しても共鳴周波数は、排気系全般の固有周波数によるものですから、基本的には大きな変化はありません。ただ、回転数が変化すれば、エネルギー変化により、もっとたくさんの共鳴周波数が出てくることにより、音色が大きく変化することが考えられます。φ1であらわされるピッチの強さは車内、車外ともに0.11と変わらず、ほぼ一定です。

反対にτeはそれが最初の10%に正規化自己相関関数が減少するのにかかる時間はマフラーの8~6msに対して、締め切った車内では10~20ms(15msくらい)に長くなっています。車内のほうが、密閉した箱のなかですから、当然残響時間が長く、響きのよい音になっています。車室内でのこの値は非常に興味深いです。普通のクルマの外で聞くような音質を(聞かせたい音質を)車内で聞ける車のようです。そのため外をこもらない音で作っているのではないでしょうか?

エンジンを切って「四季」を再生して計測にかかります。38~39dBAの静寂が戻りました。

第1楽章の先頭を計測します。

1/3 オクターブ分析を行います。

写真は79dBAですが 普通騒音計 では 最大82dBAくらいの音量です。

パワースペクトラムの3次元時間表示です。

自己相関のリアルタイム表示です。音楽特有の長い複雑な表示です。

8秒間のランニングACF計測をおこないました。VAIOとiLINK接続し,DVgate motionというアプリケーションを使って取り込みました。

SAを使用して再計算します。

計算条件 積分時間2秒、計算は約3分で終了

計算結果 これはΦ(0) 音量の時間経過
音量はこの中でも6秒間で11dBAあるので、やはりダイナミックレンジは広いようである。音が小さくなるとアイドリング音量が-20dBAであると、低いところで、アイドリング音の影響を受けるようになると思われます。

計算結果のスクリーンコピー一括で作ったグラフ。この音楽のランニングACFでのτeは50ms-100ms多いときは0.6秒にもなります。

 

ここまでは積分時間2秒でランニングACFをかけたときは人間の耳で聞く音の解析です。これを上げていくと「四季」はこの音響環境(FERRARIのドライバーズシート)では、このカーステレオの再生装置により、音楽としてτ1は1.2msから0.7msであり、両耳間相互相関関数IACCは0.3の音響パラメータで表されます。主に800Hzから1500Hzの音の高さで、両耳の相互相関を表す、IACCはその周波数帯域で0.3という値を実現しています。これはステレオ感が強い、音につつみこまれるような感じを受ける、方向感覚のシャープな音響空間としては非常にいい値です。一般に、車内のような空間は音響環境として、人間の脳や感性の観点からは適していると考えられます。

April 2003 by Masatsugu Sakurai