可聴化システム

可視化から可聴化への移行が始まりました。近年コンピュータ並びに各種音響機器制御装置の性能が飛躍的に向上し、畳み込み演算のスピードが非常に高速になりました。その結果、専用のハードウェアを使わねばならないという制約と複雑な操作から解放されました。音響機器のMIDIインターフェースが発達し、コンピュータからの一括操作が可能になり、極めて簡単に操作できるようになったのです。YOSHIMASAは音響機器の制御システムにおいても圧倒的技術力を誇っています。

可聴化システムというのはドライソースに各種音響効果を与えて、 実際の音楽ホール等に行かなくてもその場でそのホール等の音場を 再生する、いわばVirtual Realityとも言えるシステムである。

■DSP構成
可聴化システムが作り出す音響効果のデータは、それを用いる DSPs(Digital Signal Processers)構成に依存している。 そのためまず当システムで使用しているDSPsについて説明する。

まずドライソースの入り口となるのが YAMAHA DMP9-16 というミキサーである。 このミキサーにはDAT(Digital Audio Tape)、LD(Laser Disc)、CD(Compact Disc) のいずれからでもドライソースが入力できるように、各々一つずつそれらの デバイスが接続されている。

このミキサーのディジタル出力がYAMAHA DEQ5というディジタルイコライザーに 入っている。ちなみにDEQ5は2台つながっており、このDEQ5は1台目のものである。 ミキサーと1台目のDEQ5とはYAMAHAのY2ケーブルで接続されている。

1台目のDEQ5の出力はAES/EBUというフォーマットのディジタル信号とアナログ信号の 2種類がある。
AES/EBUの方は2台目のDEQ5にディジタルで入力されている。アナログ信号の方は ディストリビューションユニットを経由してディレイユニットとリバーブレータに入る。
2台目のDEQ5からはアナログでL/Rの2チャンネルがでており、Lチャンネルが2番 スピーカー、Rチャンネルが11番スピーカーにつながって、ステレオで直達音を 再現している。

1台目のDEQ5のアナログ出力は、L/R各々一台ずつのディストリビューションユニット に入る。ここで8本の同じアナログ信号に複写されアナログで出力される。この 出力がディレイユニットに入る。またこのDEQ5のアナログ出力は別途統合されて3台目 のディストリビューションユニットに入り、6本のアナログ信号として出力される。 この信号はリバーブレータに入る。

ディレイユニット、リバーブレーターとも1本のアナログ入力を内部で2系統に分離し、 それらが各々1チャンネルずつのアナログとして出力されている。

以上イコライザー、ディレイユニット、リバーブレータの出力は、ミキシングユニットと アンプを経由して各スピーカーにつながっている。アンプは全部で8台あるが、その中の 1台目のLチャンネルと6台目のRチャンネルについては、別途スーパーウーハーへも つながっている。

主要機器台数は以下の通り。

機器

メーカー&型番

台数

ミキサー YAMAHA DMP9-16 1
イコライザー YAMAHA DEQ5 2
ディレイユニット SONY DPS-D7 16
リバーブレータ SONY DPS-R7 6
ディストリビューションユニット Accuphase KD-78 4
ミキシングユニット Accuphase KM77 16
アンプ Accuphase PRO-3 8

 

■各機器の役割

[ DEQ5 ]



2台のDEQ5の内、ミキサーと直結している1台目のDEQ5は音源パワーを決定している。 このパワーは音場シミュレーションシステムの可視化サブシステムで算出された結果をもとに、可聴化サブシステムが決定し、MIDIデータとして送信している。

2台目のDEQ5は、音源・受音点間の距離減衰を加味した直達音を担当している。

 

[ DPS-D7 ]



この16台のディレイユニットは反射音を担当している。

ディレイユニットは1台につき48本のタップを持っており、その個々のタップで反射音線1本を表現する。

まず、可視化サブシステムの虚像法計算で求めた反射音線系列を、入射方向によって16方向に分類する。

可聴化はステレオで行うため音源が2個存在し、その各々について反射音線系列が存在する。 一方DPS-D7は1台で2チャンネル出力できるので、8台で音源1個の音線を16方向に分類して再現できる。したがってステレオの場合、16台のDPS-D7で音源2個分の反射音線系列を16方向に分類して再現する。

16方向に分類した後、各方向別に反射音線を該当タップへ埋め込んでいく。タップが余った場合は、 その方向に存在する虚像法の反射音線から最小二乗近似カーブを算出し、そのカーブに乗るような反射音線を算出する。そうして残りのタップに埋め込んでいく。

反射音線がタップ数よりも多い場合は、残響音系列の作り方によって異なる処理をする。

[ DPS-R7 ]



リバーブレータはその名の通り残響音を担当する。

このDPS-R7が持つ残響音生成アルゴリズムのうち、この可聴化システムではその中の2種類を採用 している。
1. Early Reflection
2. Hole Reverb

1は比較的狭い空間の残響に向いたアルゴリズムであり、2は大規模空間用である。現実にはほとんどの場合、2のHole Reverbを使用している。

このHole Reverbというアルゴリズムは、音圧と残響時間から自動的に残響音線系列を計算するもので タップは使用していない。

そこでDPS-D7で反射音線がタップ数よりも多い場合、DPS-D7の最後のタップに収まった反射音線の音圧と、予め算出してあるその室形での残響時間をデータとして与える。こうして残響音を作成する。

16個のスピーカーの内、すなわち16方向の内DPS-R7がつながっている(寄与する)方向はある決められた12方向のみである。よってDPS-R7に与える音圧は、その12方向のDPS-D7の各最後のタップから得られる。

 

■あらゆる音場が体験できる
音場シミュレーションシステムでの計算結果をMIDIデータとして各種DSP機器に送り、16個のスピーカを配置した試聴室内で、様々な音場を体験することができます。これが可聴化システムです。室形情報を変化させるだけであらゆる音場を体験でき、その利用方法は、企業のプレゼンテーションルームをはじめ、地方自治体等のレクリエーション施設など、非常に多岐にわたります。
また、ホールなどを建設する際、音響設計者、音響コンサルタントの意志決定支援システムとして、その絶大な威力を発揮することとなります。

◇利用例
いくつかの仮想音場を時間毎に自動的に切り替えます。会社案内・観光案内・教育教材など各種プレゼンテーションやアトラクションとしてご活用いただけます。また、音だけでなくレーザーディスクと組み合わせれば仮想現実(バーチャルリアリティ)を体験できます。もちろんレーザーディスクの制御もコンピュータが自動で行いますので、オペレータはスタートボタンを押すだけで仮想現実(バーチャルリアリティ)を体験できるのです。
営業時間中30分置きに、または毎日11時と13時と15時になど大勢の方が常にいらっしゃる場所では1日に何度もプレゼンテーションを行うのが普通です。この時毎回係員がオペレーションをしなくても上記の自動再生を決まった時間に自動的に開始する全自動再生機能もあります。

[自動再生の例]

音のイメージ 説明アナウンス 時間
説明 ようこそいらっしゃいました。仮想現実の世界をお楽しみ下さい。 30秒
鍾乳洞での音 鍾乳洞では音がよく響きこのような音になります。 30秒
トンネル内での音 同じように響いても内部の形・大きさの違いで音もこのように違って聞こえます。 30秒
音楽ホール前方での音 同じ音楽ホールでも聴く場所によって音が違います。 30秒
音楽ホール中央での音 30秒
音楽ホール後方での音 30秒
説明 このように音は部屋の大きさや聴く位置によって違って聞こえます。 30秒

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