IPネットワーク技術に関する研究会 報告書（案）　概要 第１章　IPネットワークの技術動向及び利用環境の変化 　DSL、ケーブルインターネット等によるアクセス回線のブロードバンド化、IPネットワーク関連機器の高機能化などの利用環境の変化から、IPネットワーク上で様々なアプリケーションが展開されている。特にVoIP（Voice over IP）技術の発展によって、これまでの電話と同様の音声電話をIPネットワーク上で提供するサービスが現れ、これまでの電話網における回線交換を中心とするネットワークからパケット交換によるIPネットワークに向かう変化が急激に進んでいる。 　本研究会では、このような電話網からIPネットワークに向かう急激な変化を踏まえ、IPネットワークにおける技術的課題、特に電話をIPネットワーク上で実現するための課題について検討を行った。 第２章　IP電話の現状と課題 【研究会におけるIP電話の定義】 ○ 「IP電話」： ネットワークの一部又は全部においてIPネットワーク技術を利用して提供する音声電話サービスとする。 ○ 「インターネット電話」： IP電話のうち、ＷＷＷ等のアプリケーションに利用されているものと同じIPネットワーク（以下では、単に「インターネット」とする。）を利用するものを、特に「インターネット電話」とする。 【IP電話を取り巻く国際的な動向】 ○ 　ITU第３回世界電気通信政策フォーラム 　第3回世界電気通信政策フォーラム（WTPF: World Telecommunication Policy Forum 2001）において、IP電話の世界的な導入・普及に向けたオピニオン（宣言）を採択（平成１３年３月）。 ○ 　各標準化機関における検討状況 ・ 　ITU-T （国際電気通信連合電気通信標準化部門） 　IP電話サービスの品質（接続品質、通話品質）、IP網の品質（伝送品質）、IP電話の番号等に関して、各SGにおいて継続的に検討を実施。 ・ 　ETSI（欧州電気通信標準化協会） 　TIPHONプロジェクトを設けて、IPネットワーク上での音声通話やマルチメディア通信の商用サービス化に向けた統一仕様の策定について検討。 ・ 　米国TIA（Telecommunications Industry Association：電気通信工業会） 　IPネットワーク／電話網上のエンドトゥエンドの音声品質について検討や、電話網とIPネットワークの統合を見据えた、IPネットワーク上で用いられる標準的な端末に関する検討を実施。 【諸外国におけるIP電話の動向】 　一部の国においては、既存の電話サービスに対する経済的な影響を懸念して、IP電話を禁止している場合があるが、欧米諸国のようにインターネットの普及が進んでいる国においては、IP電話に対する新たな規制を設けられている例はない。また、欧州ETSIのTIPHONプロジェクトや米国TIAを中心として、IP電話の標準化といった取組を積極的に推し進めている。 第３章　IP電話の品質 【多様な品質や機能によるIP電話サービス】 　IP電話のサービスについては、インターネットを利用する、いわゆるベストエフォートのサービスから固定電話と同等の品質を提供するサービスまで、多様な品質でのサービス提供が想定されるため、IP電話サービスが提供する機能及び料金等の利用形態等も考慮してサービスの分類を行うことが必要である。 表１：品質等によるIP電話サービスの分類例 【IP電話の品質】 ○ 　IP電話の品質は、ユーザが品質を理解し、適切なサービスの選択を可能とするため、端末を含めたエンドトゥエンドの品質で考える必要がある。 図１：IP電話サービスに係る各部における品質要因 ○ 　IP電話の品質はネットワークの伝送品質及びパソコン又はIP電話端末の特性から決まるものであり、IP電話サービス事業者がIP電話の品質を定めるためには、参照とする標準的なIP電話端末モデルの特性が必要である。 【IP電話の品質クラス】 ○ 　ITU-T、ETSIのTIPHON及びTIAにおけるIP電話の品質クラス及び現行の規定を踏まえ、IP電話の品質クラスを次のように定める。   表２：IP電話の品質クラス分類   クラスＡ （固定電話並（注）） クラスＢ （携帯電話並（注）） クラスＣ 総合伝送品質率(Ｒ) ＞８０ ＞７０ ＞５０ エンドトゥエンド遅延 ＜１００ｍｓ ＜１５０ｍｓ ＜４００ｍｓ 呼損率（接続品質） ≦０．１５ ≦０．１５ ≦０．１５       (参考値)   ＊　Ｒ値、遅延に関する表中の数値は９５％確率で満足させるものとする。 （注） ここでの固定電話並、携帯電話並とは、それぞれ電話品質に注目した場合を表し、その他の機能について既存の固定電話並又は携帯電話並を求めるものではない。