コンサートホールの音響設計と音のプリファレンス

コンサートホールの音響特性には重要な4つのファクターがあります。
  • LL:音圧レベル
  • ⊿t1:初期反射音の遅れ時間
  • Tsub:残響時間
  • IACC:両耳間相互相関度

これらは聴者が感じる音の大きさ、残響感、空間的な拡がり感を測る物理指標で、それぞれに最適値が存在します。コンサートホールの音響設計においては、各座席における多くの人の平均的プリファレンス(好み)を最大とすることが重要です。

 

ホールの特性を理解することは演奏者にとっても重要です。

(1)演奏する音楽の響きやテンポがホールの響きにあっているかどうか、それを測る指標として、τeの値が重要です。τeは音楽信号に含まれる残響成分の長さで、自己相関測定で求められます。

(2)演奏家にとって演奏しやすく、それでいて客席にいい音が聞こえるような演奏位置を選ばなければいけません。響き成分τeが短い楽器は、ステージの壁に寄せ、反対にτeの長い楽器は中央で使用します。

演奏者には適切な初期反射音の到着時間(⊿t1)と強度が必要です。ホールにとって適切な⊿t1の値も音源信号のτeから判定できます。

 

ホール運営者は観客一人一人のプリファレンスを最高にするための座席選定ができるようにする必要があります。 平均的プリファレンスが最大になるような設計をしても、ホール内での音質は座席ごとに異なります。例えば前後に50mもあるホールであれば、ステージのすぐ前は音が大きいですが後ろの席では小さな音になります。また壁の近くは、⊿t1が短くなります。聴者はひとりずつ好みが違うので、適当な席選びでは極端に相性の悪い座席に座る可能性があります。運が悪ければ、その人にとっては最悪の音質となります。逆に、すべての聴者に完璧な座席を紹介できれば、完璧なホールを建造したのと同じになります。つまり、聴者の座席選びを適切に行えば、ホールの音質をかなりカバーすることが可能といえます。