霧島国際音楽ホールの音場シミュレーション室

 

鹿児島県にある霧島国際音楽ホールに設置された音場シミュレーション室では、世界の有名音楽ホールの音を体験できる”音場疑似体験”、簡単な検査で最適な座席がわかる”プリファレンス検査”、様々なホールの舞台で演奏しているような音響効果を作り出す”演奏者支援システム”が利用可能です。


「従来研究所の中でだけ可能とされてきた、 5次反射音までの音場シミュレーションを、一般の人にも聴かせようという試みです。 DECのVAXは非常に信頼度が高く、故障もありません。また最初の仕様に比べれば、 100倍以上の処理速度を実現しましたし、オープン化、Windowsを導入することによって、専門家でなくても簡単に使うことができるようになりました」

音場シミュレーション室では、世界の著名な音楽ホールの音響に関する情報がインプットされており、簡単な操作でそれらのホールの音場が再現され、いながらにしてそれらのホールでの音楽を楽しむことができます。また、このシステムは演奏家に対する支援にも役立っています。

 

「みやまコンセールでは音場シミュレーション室でのプリファレンス検査による好みの座席予約を行うことができるのが大きな特長です。個々人の好みを先に述べた四つの要素について調べ、個人データとして蓄積します。予約の際にはデータの蓄積されたIDカードとホールの座席の計算結果とが照合されて、その人に適した座席を表示、その場で予約することができます」(瀬戸口氏)

「単に音を再生するオーディオ機器ではなく、音楽家のレベルアップにまで役立てようと考えたシステムであることは大変嬉しいことでした。音楽家は自己満足のためではなく、観客にどう聴こえるかを一生懸命考えながら、演奏します。たとえばホールによって音の響きは違うので、音楽家は唱法や奏法をホールによって変えています。また『そば鳴り』といって、音楽家本人には大きく聴こえても観客にはよく響かないという唱法や奏法上の欠陥を直していくことも重要です。音場シミュレーションによって、音楽家は従来自分ひとりではわからなかった『そば鳴り』を分析し、ホールごとに最適な演奏法の練習を行うことができるようになりました。そのためこのシステムは、現在入手できる最上のオーディオ機器で構成されています」(瀬戸口氏)

「何社もの大手音響機器メーカにシステム構築してくれないかと声をかけましたが、ダメでした。そこに具体的な提案を持ってきてくれたのが吉正電子。安藤先生とのやりとりの中で吉正電子から更に新たな提案があり、それをシステムとして実現する中で、信頼度も一層増していきました」(瀬戸口氏)

「使うのは音楽専門家であって、コンピュータの専門家ではありません。メカは単純な方がよいし、スイッチ・ポンでできれば一番ありがたいのです。 VAXだとか、難しいことを意識せずに扱えるのがなによりです」(瀬戸口氏)

「牧園町一帯は夏場積乱雲が発生することが多く、落雷の可能性が高まると自動的に停電するようになっています。停電時間がきわめて短いので一般の電源なら問題はないのですが、コンピュータには影響を与えます。こうしたこともあり、無停電電源装置の導入など万全の態勢をとって稼働させたいと考えています」(瀬戸口氏)

 

プリファレンス検査では、上演される楽曲のτe(信号に含まれる残響成分の長さ)に着目し、同じような長さのτeの検査曲を使用して音響ファクター(音量、残響時間、拡がり感)に対する聴者の好みを調べます。それぞれのファクターの最適値と共に、その人がどの要素に敏感で、どの要素には要求がうるさくはないということが、プリファレンスの関数として4つのファクターごとに求められます。

その人がその座席に座って、上演される楽曲を聴いた場合の音質面での適合度を計算するには、その座席の音響特性を測定しておく必要があります。 その座席が聴者の好みと完全に一致すると減点ゼロ、一致しない部分は、プリファレンス関数により得られるマイナスポイントを計算します。ひとつづつのファクターについての適合度を調べていき、4つのファクターの得点を足せば、総合プリファレンス値が求まります。

検査の結果は適合度によって色分けされた座席表として提示され、座席選びの参考にできます。